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2013-09-13 10:00

(連載)TPP交渉の「聖域」の定義(1)

緒方 林太郎  前衆議院議員
 TPPについて、「聖域死守」という議論がよく行われます。コメ、麦類(小麦・大麦)、砂糖・甘味、肉類(牛肉・豚肉)、乳製品ということで、よく5品目と言われますが、実質的には7-8品目あると思っていただいて結構です(それらも関税の世界では細分化されていて、タリフラインにブレークダウンすると数百になります。以下は基本的にタリフラインでの数字でお話します)。これらを含め、これまでの自由貿易協定で一度も関税撤廃したことがないものが農林水産品で834あります。これに皮革・靴を含めて、概ね900前後について関税撤廃をしたことがありません。日本の輸入タリフラインは、全体で概ね9000ですので10%強のタリフラインが除外されているということになります(これまで、日本が締結した自由貿易協定で一番関税撤廃率が高かった日・フィリピンで89.4%です)。

 ここで今後の見通しについて書いておきます。間違いなく、この読みは当たると思います。この900品目すべてを守りきることはまず無理です。そもそも、その状態で関税交渉のオファーを出しても、まともに相手をしてくれる国は少ないでしょう。「そんなオファーに対して、今、うちが準備している関税撤廃率の高いオファーなど出せない」と、そもそも、リクエスト・オファーすら成立しない国すらあるでしょう(最初の交渉では、日本が撤廃率80%付近で用意したオファーに対して、オファーの交換を拒否した国があったと報道されていました)。

 しかし、私も上記の5品目については何らかの形で守っていかないと、特に北海道、沖縄、畜産県、コメどころといった地域全体が崩壊してしまいます。そうすると、守るべき「聖域」というのが何なのかということをよく考えなくてはいけません。その精査の作業が今、求められています。アプローチは2つあると思います。(1)一律基準、(2)個別タリフラインの精査です。(1)ですが、私は更に細分化して、(a)関税率が低いもの、(b)国内生産が少ないものについては、関税を撤廃して、国内対策をきちんと講ずるのがいいと思います。

 (a)については、例えば、低関税で保護効果が相対的に薄いと思われるものについては撤廃するということです。簡単に言えば、「○%以下の関税は撤廃する」ということです。合板、水産品等にそういうものが多いですね。単純にタリフラインで10%以下のものを洗い出すと、160-70くらいのタリフラインが該当します。(b)ですが、これも同じでして「国内生産額が○億円以下のものについては撤廃する」ということです。こういう品目は地域性が高いものが多いでしょうから、難しい面もありますが、そこは国内対策をしっかりと講ずるということで対応すべきではないかと思います。生産額が限定的ですから、国内対策費用もそこまで大きくなることはないでしょう。(つづく)

 
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