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2013-07-30 15:00

(連載)日本農業の戦略的可能性(1)

島田 晴雄  千葉商科大学学長
 7月のマレーシア会議から日本もTPPの本格的交渉に参加することができるようになった。TPPについては、賛成派は画期的な多国間の自由貿易圏に参加することができるので、日本の得意な工業製品などがより輸出を伸ばせるし、逆に参加をしないと著しく不利になると主張し、反対派は農業や医療や保険などの分野で日本は外国からの攻勢にさらされて重大な損害を被るとする。とりわけ農業については、貿易が自由化されると象徴的な米を中心に高価格の農産品は外国からの競争にさらされて生産も雇用も縮小せざるを得ないという議論が依然として根強い。TPP参加を推進する安倍政権では、農業の競争力を高めるために様々な支援策を検討している。

 本稿では、現在の日本の農業の構造的歪みを明らかにし、根本的な改革によって日本の農業の競争力が飛躍的に高まる方策を指摘し、農業政策の関係者に再考を促したい。

 日本の農業については、政府はかねてから食料自給率が4割と低く、食料安全保障が危惧される、農村に跡継ぎや新規参入者が少なく、農業人口が高齢化して衰滅する恐れがある、と警鐘を鳴らしている。この2つの命題は本質的な事実と著しく乖離している。4割という食料自給率はカロリー自給率であるだけでなく穀物に限られており、野菜や果物や畜産が含まれていない。4割の自給穀物は米だが、残りのほとんどは家畜の飼料用の輸入穀物である。総額約10兆円の農産物価額の中で米は2兆円を占めるのみで、自給率10割の野菜、9割の果物、7割の畜産を考慮すれば日本の食糧安全保障は充分確保されている。ちなみに農水省は輸入飼料で育った家畜は国産ではないとしているが、これば詭弁であり欺瞞である。

 農村人口の減少が問題視されているが、日本の農村人口は全人口の1.6%であり、自給率が2倍の英国では0.8%、輸出大農業国の米国では0.9%。すなわち日本はまだ農業人口は過剰なのだ。その中味を見ると日本の販売農家戸数は約200万戸、うち米作農家は165万戸、そのうち135万戸が米の収入が年間100万円にも満たない零細高齢農家である。多くの零細高齢農家は農協の組合員であり、歴史的に自民党の票田として生産性の向上なしに現状維持を続けさせられてきた不幸な人々である。この人々も平均年齢が70に近づいてきており、このままの状態で頑張って戴くのはお気の毒である。こうした事態を抜本的に改善するために私は以下を提案したい。(つづく)
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