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2013-07-10 14:49

(連載)「ねじれ解消」は、むしろアベノミクスの障害になる(2)

鈴木  亘  学習院大学教授
 自民党守旧派や霞が関の官僚達にとっては、選挙後も安倍内閣の支持率が高すぎることは邪魔以外の何物でもないので、スキャンダルなどで適度に支持率を下げようとするかもしれない。今回の安倍政権では、前回に比べて嘘のように閣僚スキャンダルや官庁の失策が出てこないが、選挙後は、政権を倒さない程度に、いくつか出てくるのではないだろうか(前回は、閣僚スキャンダルの異様なリーク合戦や、社会保険庁官僚の自爆テロで政権が倒れた)。そして、内閣改造に追い込んで、守旧派大物議員を送り込んでくるというシナリオが考えられる。そうなれば、改革は無理である。

 その意味で、実はアベノミックス推進にとって重要なことは、自民党大勝による「ねじれ解消」を実現することではなく、与野党を合わせた「改革勢力」が過半数を握ることである。改革勢力とは、官邸にいる側近や若手を中心とした自民党の改革派と、みんなの党、日本維新の会、民主党の一部である。安倍首相らがいくら族議員達に追い込まれても、野党の改革勢力と結んで改革を進めることができる。しかも、公務員制度改革などの本丸の改革も視野に入る。

 現在、みんなの党と日本維新の会の「第3極政党」は、安倍首相に完全に改革の「お株」を奪われてしまっており、アベノミクスをはじめとする安倍首相の改革方針と「差別化」をするために、かなり苦しい闘いを強いられている。例えば、みんなの党は、自民党には真似のできない公務員制度改革断行を打ち出しているが、もはや公務員制度改革に対して、国民の関心は薄れてしまっており、あまりアピールできていない。また、日本維新の会も、自民党には真似のできない「既得権に踏み込むような抜本的な規制緩和策」を盛んにアピールしているが、アベノミクスの第3の矢(成長戦略)との差は、素人目には実は分かりづらい。さらに、アベノミクスが全体としてうまくいっている以上、痛みを伴う抜本的な改革の必要性は、一般国民には届きにくいものと思われる。

 それよりも、もともと、現在のアベノミクスや安倍首相が進める諸改革は、みんなの党や日本維新の会が先に訴えていたものなのだから、堂々とその支持と協力を打ち出して良いのではないか。良く考えれば、高橋洋一氏や竹中平蔵氏など、安倍政権のブレーン、もしくはその政策に影響力を与えている人々は、みんなの党や日本維新の会のブレーンと重なっている場合が多い。また、国民の支持層もかなり重なっていると言える。衆院選前に第3極政党を支持していた人々が、現在、安倍政権を支持しているのである。むしろ、アベノミクスをはじめとする諸改革を確実に断行させるために、みんなの党や日本維新の会が「必要不可欠」であり、自民党の族議員達に力をつけさせては安倍首相、アベノミクスが危ういと言うことを、声を大にして主張すべきである。ポイントは、自民党を安倍首相やその側近らの「改革派」と、族議員らの「守旧派」の2色に色分けして、前者を支持し、後者のみを敵とすることである。安倍首相が看板である自民党全体を一枚岩として、敵に回すのは得策ではない。(つづく)
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