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2013-06-24 06:06

参院選は自公で安定多数が視野に入った

杉浦 正章  政治評論家
 国政選挙とほぼ確実に連動する都議選で自民党と公明党が3分の2議席まであと2議席の圧勝となった。背景を分析すれば、内閣・政党への高支持率が如実に反映されたことを物語る。浮動層の棄権による投票率低下は、支持率を確信的に選挙に反映させたことになる。この高支持率はよほどの失政、大失言がない限り参院選まで継続し、自公に弾みを付け、過半数はおろか、安定多数まで視野に入る流れとなった。壊滅的敗北の民主、維新両党は最大の原因が党首の能力不足にあるにもかかわらず、交代できる情勢も時間もなく、訴求力とリーダーシップ欠如のまま、参院選に臨む。これが自公を側面から“支援”する流れでもある。選挙結果は、都議選史上2番目に低い投票率43.5%がすべてを物語ると言ってもよい。無党派層が投票に行かず、支持基盤の強い組織政党である自民、公明、共産の3党に有利に働いた。出口調査が投票の動向を一番正確に物語るが、NHKの調査では民主11%、自民39%、公明7%、共産7%、みんな5%であった。4年前の調査では自民27%、民主32%であったから、支持率が完全に逆転したことになる。

 無党派層は選挙に“風”を吹かせる最大の要因であり、民主、維新などポピュリズムに基盤を置く政党には不可欠の要素だ。
これが自民59、公明23、共産17、民主15、みんな7、ネット3、維新2という選挙結果をもたらした。最大の注目点は、自民党が1人区7を独占したことにある。これは参院選1人区31選挙区の動向を占うカギとなるものでもあろう。大敗北の民主党も、維新も、執行部の責任が極めて大きいと言わなければなるまい。それもトップリーダーの能力欠如という側面が大きい。民主党は総選挙敗北で一線級がすべて逃げ、二線級ばかりが執行部を担当した。党勢の立て直しという大事業には党の総力を挙げて臨まなければならないにもかかわらず、岡田克也も、前原誠司も、ろくな役職に就かず事実上“傍観”を極め込んだ。代表・海江田万里はもともと底が知れているが、嘱望された幹事長・細野豪志は外見だけで内容が伴わない姿を露呈した。海江田・細野コンビでは3年3か月の大失政の穴埋めと党勢建て直しはもともと不可能であったのだ。

 民主党はまさに壊滅的敗北で、共産党より下の第4党に転落したにもかかわらず、海江田は「都議選は参院選との一体の選挙で、選挙戦は途中だ」と続投を表明している。一方、維新は共同代表の石原慎太郎も橋下徹も全く選挙に力量を発揮しなかった。投票まで数日のぎりぎりの局面になって、石原が敗北の責任をすべて橋下に押しつけたが、まさに老獪(ろうかい)の形容がぴったりの姿を露呈した。石原がほとぼりの冷めかかった慰安婦発言をなぜ持ちだしたかといえば、落選必至の子飼いの候補らへの言い訳がある。すべてを橋下の慰安婦発言のせいにしたかったのだ。落選候補らへのガス抜きが必要であったことを物語る。本来ならば前東京都知事であり、地元の責任者として陣頭指揮で都議選に当たり、その結果責任を負うべき立場であるはずの石原が“逃げ”を打っては、勝つはずもない選挙であった。34人を公認して改選前の3議席すら確保できず、2議席にとどまったことは、維新の失速度のひどさを明確に物語る。この結果、橋下だけの進退が焦点になってしまったが、維新幹事長・松井一郎は橋下の進退について「石原慎太郎共同代表と最後までやろうと話をしているし、党のメンバーがそういう思いであれば逃げることはないと思う」と完全否定している。

 こうして7月21日の参院選までは民主も維新も現体制を維持する方向となった。責任論が台頭しても、参院選まで1か月を切った。時間切れだ。自公両党にとって、これほどありがたいことはあるまい。「ポピュリスト風がなければただの人」であり、「風」は依然アベノミクスに対して吹いている。この構造は少なくとも参院選挙までは維持されそうな雲行きだ。都議選と同様にアベノミクスを前面に立てれば、憲法も、原発再稼働も、かすむことが証明された。都議選と国政選挙の連動が外れたことは、小泉純一郎が2005年に都議選で負けて、衆院選で圧勝したケースをのぞけば、ほぼない。自民党にとって“舌禍魔女”でしかない政調会長・高市早苗を黙らせれば、まずこのままの流れが参院選挙まで続くとみて良いだろう。
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