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2013-04-16 10:06

(連載)東京1極集中からの転換:地方の活性化(2)

石崎 俊雄  龍谷大学教授
 日本の人口を2億人に増やすためには、東京1極集中からの転換が必須である。今までも東京1極集中からの転換が何度も叫ばれたが、ことごとく頓挫している。それは、転換の理由が、単に都心が混雑しているとか、首都直下型地震の際のバックアップが必要だという程度のあまり必要性を感じられない理由であったからである。しかし、日本の人口を2億人に増やすとなると、東京1極集中から脱皮せざるを得ない。増加する約8,000万人をどのようにして日本国内に住まわせるか?既に1,200万人が暮らす首都圏では絶対に無理であり、首都圏のことしか頭にない政治家や役人は、それを考えることすら不可能なのである。

 一方、地方はどうか。地方はがら空きで、地方中核都市や県庁所在地の40か所に100万人ずつ計4,000万人、そして郊外の田舎に100万人ずつ計4,000万人、合わせて8,000万人増えたところで、全く問題はあるまい。おそらく、地方の首長さんに今後100年程度を掛けて200万人の人口受け入れをお願いしたら、もろ手を挙げて賛成してくれるに違いない。地方都市は、もっと発展したいと思っているが、若者の都会への流出が防げず、諦め気味になっているに過ぎない。地方にとって人口が増えることは、一時的には財政負担が大きくなるリスクもあるが、長期的に見れば活性化し発展が期待されることは疑いようのない事実である。

 東京1極集中が少子化に大きく関与していることは明らかである。まず、劣悪な住宅事情が挙げられる。豪華なマンションや郊外の一戸建てに住んでいようが、広さは3LDKや4LDK相当であり、子供ひとりかふたりが適当な人数だろう。子供を3人、4人と生んで育てるならば、もっともっと広い家に住めるようにしなければならない。まず、住宅環境を整備するために、土地税制、住宅税制などを改める必要がある。次に、若者の仕事と収入が大きな問題となる。これには、政府の産業政策が非常に重要である。多くの大企業の本社が東京に集中する現状はすぐに改める必要がある。これは、国家政策として、東京に本社が集まるように誘導してきた結果である。本来地方にあったはずの本社が、自由主義経済とは名ばかりの監督官庁による多くの規制や首都圏に過度に集中するインフラなどへの公共投資など、戦後70年ほどのバランスを欠いた施策の結果として集まったのである。それは効率を重視することで高度経済成長を後押しした功績はあったかと思うが、今や完全に過去の負の遺産であると認識すべきである。

 そして、地方の中堅企業を活性化させることと、ベンチャービジネスの育成をもっと後押しする政策が必要である。そのために、補助金を出して誘導するという従来の考えに縛られていては、地方の活性化は進まない。一番重要なことは、大企業に有利に働いている様々な規制を緩和することである。以上のように、地方で住めるような住宅政策、雇用と収入を得るための産業政策をきちんとやれば、日本の人口は再び増加に転じ、少子高齢化や経済の衰退から脱却できる。このような政策が日本の繁栄に与える効果は計り知れない。(おわり)
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