国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2013-02-22 06:35

野田の解散判断は真っ当だった

杉浦 正章  政治評論家
 「バカの知恵は後から出る」というが、2月24日の党大会で決める民主党の党改革創生案なるものを読んで情けなくなった。このような党に3年3カ月余りも国政を委ねてきたことに慄然とせざるを得ない。総選挙惨敗の理由を「トップによる失敗の連鎖が期待はずれの政権というイメージを与え続けたため」と、全てを自分たちが選んだ党首の責任にしてしまった。野田佳彦の名前こそ挙げなかったが、野田の解散の判断がすべての原因だと言わんばかりの総括である。これではいまだに離党者が続出しているのもうなずける。確かに「失敗の連鎖」はあった。しかし、それは鳩山由紀夫、小沢一郎、菅直人につながる連鎖であって、野田になってその連鎖は断ち切られた。あえて党代表として責任を負うべき比率を言えば、鳩山が70%、菅が30%とみる。野田になって、はちゃめちゃの民主党政権が、ようやく“普通の首相による普通の政権”に戻ったのだ。鳩山はその暗愚さが未だに後を引いている。「トラスト・ミー」とブッシュをだまし、「最低でも県外」と沖縄住民をだまし、悪いのはそのだましたことをいまだに理解できないでいることだ。元首相といえば日本の“顔”となるが、その顔が恥の上塗りを重ねている。イランに行って利用され、中国に行って「尖閣は係争地」発言で利用される。あの紳士的な防衛相・小野寺五典が「国賊」と最大級の表現を使って非難するのも無理からぬ事である。

 それでも本人は自分の愚かさに気付いていない。20日には沖縄で「普天間の海外移転が実現しなかったのは、米国の意向を忖度(そんたく)する外務省と防衛省のせいだ」と宣うた。これは各省の上に立つ首相たるものの心得すら理解していないことを物語る。鳩山は国中から馬鹿にされた首相であったが、菅は憎まれた首相であった。その発言が憎々しげであるからだけではない。3・11で生じた原子炉事故対策を指導せずに、“介入”して悪化させてしまった。危機の時の指導者の有りようを全く理解していなかったのだ。この鳩山=菅とつながる連鎖に、もう1人ぶら下がっていたのが小沢一郎だ。この人物ほど「盛者必衰」を物語る例は珍しい。選挙圧勝後は小沢ガールズを議員会館の自分の階に集めて悦に入り、まるで大奥の様相を呈していたものだ。いまは尾羽うち枯らして、回りに集まる政治家はほとんどいない。マニフェストに必要な16兆8千億円の財源を「政権を取ればいくらでも出てくる」と、大法螺(ほら)を吹いたが、すぐに馬脚が現れた。いまやマニフェストという言葉すら「不愉快」の代名詞として国民の間に定着したのだ。

 その小沢が今になって野田の解散判断に疑問を呈している。「二百何十人も殺したのに、『これでよかった』と言うのは信じられない。どういう精神構造をしているのか」と批判。野田の解散の意図についても「自民党も過半数に届かないだろう。自分らもほどほど生き残れば、連立を組めるという打算だ。自民党と結ぶことを前提にして政治行動をするというのは、本当にむちゃくちゃで、邪な考え方だ。でも、そうとしか解釈できない。」と分析。野田が選挙後の自民党との連立を意図していたと断じている。この小沢の判断は、数だけが信条で生きてきた政治家ならぬ政治屋の判断であろう。それでは小沢が主張し、腹心の幹事長・輿石東にも言わせた衆参同日選挙で勝てたかと言うことだが、党内抗争を繰り返し、まるで政党の体をなしていない民主党政権である。衆参同日選挙をやれば、民主党と維新や他の野党との共食いはさらに拡大、民主党は衆参双方で大惨敗の連動を引き起こしただろう。前原誠司が参院選の見通しについて最近「おそらく自公が勝ち、3年間ねじれのない政権になる。民主党は10議席を上回るぐらいしか取れない」と発言しているとおり、冷静に見れば、いつ解散をやっても民主党は敗退する運命にあったのだ。あと半年も民主党政権の体たらくを見せつけられたら、国民の不満は衆参両院選挙に向けて爆発していたのだ。

 首相という立場は、時には自分の支持基盤である政党の利害すら超越した判断を下さなければならなくなるときがある。その判断ができるのは政治家であって、政治屋ではない。小沢が「なんで解散をしたのか今もって分からない」と述べているのは、本当の大局を読めないからに過ぎない。筆者はかねてから「解散は政治の総合芸術」と書いてきたが、野田の解散ほど、困難で錯綜していた例を知らない。マスコミや評論家たちが軒並み読み間違え、任期満了選挙説を唱えるものまでいたことからもうなずける。野田の判断は大局を見れば決して間違っていなかったと断言できる。野田は、自らの政党のありさまを目の当たりにして、「この政党では国が持たない」という判断に立ち至ったのだ。加えて1内閣1課題で消費税増税も達成した。解散は政党間の公約でもあり、大局から見れば果たさざるを得ないと決断したのだ。そして野田の判断は、結果として正しかった。なぜなら自民党政権が、ようやく3年3か月の政治の泥沼から抜け出せるという希望をこの国に与えているからだ。野田は明らかに連立よりも自民党へのバトンタッチを意識して解散を断行したのだ。民主党の大敗は一にかかって欺瞞のマニフェストと、これを取り繕おうとした鳩山、管、小沢の目指した「衆愚の政治」にあるのだ。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム