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2013-02-14 07:03

日米欧を軸に北への金融制裁を推進せよ

杉浦 正章  政治評論家
 北朝鮮の暴走に対する国際社会の潮流は、国連を舞台に展開される流れと、米国、日本、韓国を中心に西欧諸国を巻き込んだ流れに大別される。最大の焦点である北に対する金融制裁や海上封鎖は、恐らく中国が反対して国連安保理決議では全会一致で可決される方向になく、米国を中心に実行段階に移行させるしかあるまい。中東情勢にかかりっきりの米国は金融制裁に前向きであるものの、“本腰”を入れるかどうか微妙だ。そこで最大の焦点となるのが、来週末の首相・安倍晋三とオバマの日米首脳会談と、これに先立つ2月14日朝の電話会談となろう。北は、遅くても5年後、早ければ3年以内に、小型化した核弾頭をミサイルに搭載する技術を獲得することになり、事態は新しいステージに入った。まさに“狂人に刃物”の状態が現実のものとなる。これまで国際社会は、北を思いとどまらせるため様々な手段を講じてきた。北を含めた6者協議では2005年に包括的合意に達したものの、北は2006年に核実験。 07年にやはり合意したが09年に核実験。要するに、国際社会は北が核ミサイルを製造するための時間稼ぎの場を与えただけということになる。

 とりわけ米国は、騙され続けている。北が核施設を自ら爆破したのを喜んで援助を送り続け失敗した。金融制裁措置でブッシュ政権は北の息の根を止めつつあったものの、日本等の反対を押しきって08年に制裁措置を解除してしまった。要するに、腰が定まっていないのである。しかし、北の大陸間弾道弾がサンフランシスコに到達するとあっては、対応を変えざるを得ない。オバマは一般教書演説の中で北を「脅威」と位置づけたのだ。「北は孤立化を深めるだけだ。我々は同盟国とともに我が国のミサイル防衛を強化し、この脅威に対して断固とした行動をとる」と発言したのである。ようやく米国も事態の深刻さが分かってきたことになる。米国の基本戦略は、極めて効果の高い金融制裁に焦点が当てられつつある。北への金の流れを遮断するのだから、制裁措置の中では最大の効果が期待されるものだ。これに加えて、北朝鮮の船を臨検する事実上の海上封鎖も検討されている。米国は、これらの措置を軍事的強制力の伴う国連憲章7章と連動する形で実現するため、安保理内部の調整をする方向のようだ。

 ところが中国は「北の政権崩壊→大量難民の流入→北東アジア情勢の激変」につながるような事態は一切回避する方針である。中国は、北のミサイルに対する安保理決議に際しては、「核実験をすれば重大な行動をとる」とする内容を認めた上で賛成票を投じた。しかし核実験後の安保理では、国連憲章第7章との連動を拒否している。米国はこうした中国と水面下での接触を続けている。しかし中国は、核実験後は、北を窮地に追い詰めるような決議には賛成しないものとみられる。おそらく金融制裁措置や臨検には反対するものとみられる。したがって国連決議において実効性のある措置がとられる可能性は少ないのであろう。しかし、日米韓が結束して中国に制裁を迫る事は、外交的にはかなり重要な意味を持つ。国家主席就任前の習近平にとっては、国際社会への“踏み絵”となる性格のものであるからだ。したがって、国連安保理の場は、中国をギリギリまで追い詰めて妥協を引き出す試金石となる性格のものと位置づけられる。

 こうした情勢からみて、結局は、日米韓を中心に西欧諸国を引き込んで金融制裁に踏み切るしかあるまい。安倍はオバマに対して「金融制裁を働きかけたい」としており、早ければ2月14日の電話会談でもこれを話し合う可能性がある。いずれにしても安倍にとっては、ワシントンでの日米首脳会談が時期的に絶好のチャンスとして位置づけられるものとなった。安倍は、本腰を入れているかどうかまだわからないオバマをなんとしてでも説得し、北の封じ込めを実現しなければなるまい。金融制裁はもちろん、臨検についても、合意を目指す必要がある。臨検については、明らかにテロ輸出国家になりかねない北朝鮮のイラン、パキスタンやテロリストとの接触、核輸出を阻止するものであり、かなりの効果があるものと思われる。当然海上自衛隊も臨検に参加することにならなければ、米国を動かすことにならないだろう。ここは安倍も腹を決めておくことが求められる。要するに、北を相手にして6者協議など話し合いの場を設定しても効果がない事は、過去の事例で証明されている。当分の間はミサイル・核実験への代償がいかに高くつくものかを、最高指導者・金正恩に骨の髄まで叩き込んでおく必要がある場面だ。
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