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2013-01-11 06:43

電子新聞化で朝日が大きくリード

杉浦 正章  政治評論家
 ついに朝日新聞が電子新聞をフルモデルチェンジし、1月10日から新聞紙のレイアウトで読むことができるようになった。やはりニュースは紙面でその大小を見極めることがもっとも分かりやすく、横書きのWebニュースが縦書きの紙面へと回帰したとも言える。これで日経、産経と合わせて3紙が Webに紙面を露出させた。電子版化は時代の潮流であり、読売が大きく差をつけられたことは否めない。経営の古さが出遅れの原因だろう。Webでニュースを見る層は圧倒的に若い世代である。安保、原発推進などせっかくの読売の論調が、若年層において朝日に席巻されていくのは国論形成の上でも問題がある。読売は早期に追いつくべきであろう。さもないと年寄りばかりが読む「ジジババ新聞」になってしまう。朝日新聞デジタルは、読者に我が国トップクラスの情報を、「徹底的に味わい尽くさせる」という“思想”を感じさせる。トップページにある「朝刊紙面」ボタンをクリックするだけで、朝刊紙面の全ページがサムネイル(小さな画像)で表示される。読みたい面をクリックすれば、紙面ビューアーが飛び出してくる。サムネイルは小さすぎるため記事の内容までは分からないが、1面、総合面、経済面などの説明がついているために使いやすい。紙面ビューアーの操作は実にスムーズでストレス・フリーの操作ができる。ページめくりも矢印のクリックだけで簡単だ。とりわけ Web記事の最大のポイントである記事の拡大・縮小がマウスのホイールだけできるのはありがたい。

 日経は動作が多く、煩雑だ。朝日紙面の記事と横書き記事は日経と同様に連動していて、すぐに切り替えられる。小生の場合、記事は横書きで読む癖がついているため、まず紙面を選んで、ワンクリックして横書きで読む。新聞紙面は午前5時に東京の最終版が更新される。バックナンバーは一週間前までそろっていて、すぐに切り替えられる。2月導入となるが、デジタルに新たに加わる予定の「タイムライン」は、選んだニュースの過去記事を、写真とともに時系列で読める機能だ。めまぐるしく進展するニュースを過去にさかのぼってビジュアルに見られるというのは、実によいサービスだ。「天声人語」には熱烈なフアンがいるとみえて、「天声人語ビューアー」まで登場させた。140人の論説が見られる本来有料のWEBRONZAや、医療、健康の「アピタル」も付録でついている。検索機能も強力だ。1年前にさかのぼって無料で検索できる。受動でなく能動でニュースを知る時代とも言える。

 最大の問題はWeb紙面が朝刊だけに限られていることだ。日経は朝夕刊が見られるから、朝日の現状には不満が残る。料金もデジタルコースだけだと3800円だから、4000円の日経と比べて割高となる。読売は宅配読者限定の157円。産経は宅配に関係なく350円と安い。全国紙朝日の紙面電子化は、新聞の宅配システムにも大きな影響を及ぼすだろう。北海道で4000円かけてペイしない宅配をしている朝日が、まるまる月額購読料3800円の中に占める配達料がなくなる。過度期は販売店との関係をどのように保つかが最大のネックであり、読売がなかなか本格参入しないのは自慢の1000万部を割ったとは言え、販売店対策があることは言うまでもない。新聞経営への影響だが、2010年にスタートした日経の場合、昨年4月の社告によると有料会員数が20万人を超えた。トップは100万人の会員がいるウオール・ストリート・ジャーナル。これにニューヨーク・タイムズ、英フィナンシャル・タイムズが続いており、日経は世界第4位となっている。

 Web版がどの程度影響しているかは不明だが、日経の12年1~6月期の連結業績は純利益が60%増の63億円と、好調だ。朝日の12年3月期連結決算も、純利益が前年同期の約3倍の163億5千万円と、2期連続の黒字となった。朝日も有料会員数を公表すべきだ。朝日の場合、Web化先進国の米国の影響がかなりあると思われる。ニューヨーク・タイムズが急速に電子版に移行していることから影響を受けているのだろう。ニューヨーク・タイムズの平日版の総部数は12年9月30日時点で前年比40%増の161万部。内訳は紙媒体が71万部に対して、電子版は紙媒体を大きく上回る89万部だ。読売は昨年、宅配購読者に限って、電子化「読売プレミアム」を実現した。157円は電子版だけ見る読者にとっては購読料金に上乗せの4082円となるから決して安いものではないが、その内容、読みやすさは朝日を上回るものがあった。しかし、朝日のフルモデルチェンジで再び大きく差をつけられた。圧倒的に一覧性において紙面レイアウトの方が有利に立つ。時代の流れは紙面電子化にある。早期に追随し、朝刊・夕刊両方を電子化すれば、朝日を追い抜ける。自民党ですらネット選挙の時代だ。新聞のネット戦争に敗れてどうする。
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