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2012-11-13 15:29

(連載)米兵に怒り狂い、中国人には沈黙する日本人(1)

酒井 信彦  日本ナショナリズム研究所長・元東京大学教授
 沖縄でまたアメリカ兵による暴力事件が発生したと、マスコミは大騒ぎをしている。事件というのは11月2日の未明に、沖縄県読谷村の古堅というところで、アメリカ兵が飲み屋で酒を飲んで暴れ、同じ建物の三階の民家に侵入して、寝ていた子供の顔を殴り、テレビを蹴って壊したというものである。アメリカ兵はその後逃げようとして窓から転落、大けがをして海軍病院に運び込まれた。大騒ぎになった背景には、米軍兵士に対する夜間外出禁止令が出されていた、そのさなかの事件であったことがある。10月に起きた沖縄の婦女暴行事件のために、10月19日から、午後11時から午前5時までの外出禁止令が、沖縄に限らず日本国内すべての米軍兵士に対し出されていたらしい。

 この種のニュースがとりわけ大好きな朝日新聞は、さっそく当日2日の夕刊の一面トップで報じている。それは極めて目立つ4段の見出しで、「米兵、酔って侵入・暴行」「沖縄 外出禁止令さなか」と銘打たれている。さらに社会面の十三面でも、「『外出禁止令、空手形だ』また米兵怒る沖縄」と、これは3段見出しで取り上げ、現場の建物のカラー写真まで、ご丁寧に載せている。見出しで分かるように、両方とも外出禁止令が出ていたことを強調しており、共にかなりの大型記事である。朝日新聞はそれでも不十分だったようで、翌3日の朝刊の二面でも大きく取り上げている。これも見出しを紹介すると、「沖縄・暴行事件」「『また米兵』怒り頂点」「政権、抗議しただけ」「知事『米軍』への信頼薄い」とある。また3日も社会面でも取り上げ、「外出禁止 意味なし」「米兵が侵入・暴行」「帰宅促され憤慨・街、緩い巡回」といった見出しがならぶ。

 この社会面の記事は、外出禁止の実態について割と詳しく解説している。それによると、現在は基地の外部に居住する軍人も結構いて、それらの人間を米軍もきちんと管理など出来ないという。見出しの、「街、緩い巡回」とは、そのことを指している。また見出しの、「帰宅促され憤慨」というのは、暴行犯が外出禁止時間だから帰れと注意されたら、腹を立てて大声を出して暴れだしたことを表している。憤慨した犯人は三階に駆け上がり、民家に乱入して、寝ていた子供を殴ったわけである。

 つまりこの事件は、外出禁止令が引き起こした事件なのである。外出禁止令が出されなければ、起きなかった事件である。その意味で、客観的に見れば、まことに滑稽な事件であると言わざるを得ない。事件を起こさないようにすることが、米兵のフラストレーションを喚起して、かえって事件をおこしているのである。しかしこのもっとも重要なポイントを、朝日新聞は全く指摘しない。沖縄の人間も、「外出禁止令は空手形だ」「外出禁止令、意味なし」と言っているようだから、アメリカ軍もくだらない外出禁止令など、一日も早く止めた方がいいだろう。(つづく)
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