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2012-10-05 17:26

身動きが取れなくなった野田政権

尾形 宣夫  ジャーナリスト
 野田第3次改造内閣の発足、安倍自民党執行部も動き出したことで、東京・永田町は「近いうち解散」を巡るあの手この手の駆け引きが山場に差し掛かっている。野田政権は改造で心機一転、課題処理にチーム力を発揮すると言うが、改造の中身を見れば党代表選、通常国会の論功行賞、内閣と党執行部の入れ替え、積み残し人事の処理、そして来るべき解散・総選挙を意識した中堅、若手の政務3役への登用ばかりで、山積する内外の難題処理に立ち向かうような布陣などと言えたものではない。 要するに、何をやろうとする改造内閣なのかさっぱり分からない改造だった。通常国会で積み残しになった課題に答えを出すならば、一日も早い臨時国会の開会が必要なのだが、政権にはその気配すら見えない。赤字国債発行に必要な公債特例法案、さらには一票の格差是正の選挙制度改革法案の成立が保証されないようでは「臨時国会は開けない」と政権最高幹部は言う。野田首相は自ら言い出した新体制での党首会談さえも、今となっては「その前に幹事長、国会対策委員長レベルで詰める必要がある」と煮え切らない。続投する輿石幹事長などは、早期の解散・総選挙など考えもしないと野党要求を一顧だにしない。

 民主党政権のだらしなさと反対に、自民党支持が急回復している。民主党政権の〝失政〟という「敵失」に助けられたことは否定できないが、政党支持率では自民党支持が民主党支持を大きく上回っている。社会保障と税の一体改革関連法案の可決に手を差し伸べた自民党は、3党合意時点から純粋の「野党」ではなくなった。自公両党の協力なくして国会運営ができなくなっていたからだ。にもかかわらず、野田政権は同法案成立後、懸案処理を理由に手のひらを返すように3党合意の「近いうち解散」を棚上げ、2カ月前に自民から門前払いを食った「近い将来の解散」を再び言い出している。有り体に言うならば、自民党にとっては野田政権のこのところの言動は「恩を仇で返す」ような仕打ちであろう。「我慢にも限度がある」といったところか。

 首相が言い出した党首会談は見通しも立たない。衆院での民主党議員の離党が続き、与野党逆転の可能性が高まっている現状では、政権は臨時国会召集どころの話ではなくなっている。国会が始まれば、すぐさま内閣不信任決議案が突きつけられる事態も大いにありえるからだ。現に自民党の石破幹事長の「年内総選挙」は一段とオクターブが上がっており、本日10月5日に開かれた自民党の安倍総裁と公明党の山口代表の会談でも、近く予定される3党首会談で年内解散を要求することを確認した。懸案処理の必要性を強調しながら一方でその審議の場をつくろうとしない野田首相の政権運営は、国民に理解しがたい「自己都合」としか映らない。首相は党首会談が開かれても「解散の時期は言わない」と繰り返している。首相の専権事項だから首相が言う理屈は分かるが、通常国会で党首同士が交わした「近いうちの解散」の約束が反故にされていいはずはない。3党合意の経緯を見れば、首相が自ら専権事項を取り引き材料としたことは明白だ。それを今になって「専権」を振り回すようでは何をかいわんやである。

 私は野田第3次改造内閣を「最後の晩餐内閣」と言った。何をやろうとするのか分からない、実際、懸案処理に十分対応できるか疑わしいような新任閣僚が並ぶ改造内閣の頼りなさは、もはや「国民の生活を守る」政権とは言い難い。いたずらに臨時国会召集を先延ばしすることは、国政をさらに混乱させるだけでない。国民生活をもっと蝕むことを自覚すべきだ。野党の攻勢を避けるため「懸案」を振りかざすのは、菅前政権の末期と全く同じだ。野田首相がやるべきことは一日も早い臨時国会の召集である。
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