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2012-08-27 18:28

(連載)日韓対立、我が国は「法律戦」に徹すべし(1)

高峰 康修  日本国際フォーラム客員主任研究員
 韓国の李明博大統領による竹島上陸に端を発する日韓対立激化の根底にあるのは、いうまでもなく領有権問題と歴史問題である。韓国側からの天皇陛下への謝罪要求や親書の受け取り拒否といった対応は尋常ではなく、我が国が強く反発するのは当然のことである。ただ、シャトル外交をこちらから停止するとか、韓国で開催される会議に閣僚を送らないとか、一見強硬策に見えるが実効性の疑わしいようなことは行なうべきではない。それでは、どういう基本姿勢で臨むべきかといえば、「戦域」を「法律空間」に集中させること、すなわち「法律戦」に徹することである。

 竹島領有権をめぐっては、国際司法裁判所(ICJ)への提訴がようやく行なわれることとなった。周知の通り、ICJで実際に裁判が行なわれるためには当事国双方の同意が必要で、韓国側が拒否している以上、ICJでの裁判は現実のものとはならない。しかし、このことの意義を過小評価すべきではない。

 竹島領有権問題をICJの場で解決するというのは、1952年に韓国側が「李承晩ライン」を一方的に設定して、竹島を不法占拠し始めて以来の、日本側の一貫した立場である。1954年9月には、口上書をもって竹島の領有権問題を国際司法裁判所に付託することを韓国側に提案したが、韓国はこの提案を直ちに拒否している。また、1962年3月に行なわれた日韓外相会談の際にも、小坂善太郎外務大臣より崔徳新・韓国外務部長官に対して、竹島領有権問題のICJへの付託を提案したが、韓国は受け入れていない。そして、1962年を最後に、日本政府から韓国側に対するこの種の提案は、直接的には行われてこなかった。

 英仏がICJで争ったマンキエ・エクレオ事件では、カルネイロ裁判官が、個別意見として「イギリス政府が行動し、主権を行使し続けた一方で、フランスはペーパー・プロテスト(外交的抗議)をすることで満足した。ほかには何もできなかったのであろうか。仲裁裁判を提案することができたし、すべきであった」「そうした提案をしなかったことは、自己の請求を無効にしてしまわないまでも、請求の効力を奪うものである」と言っている。我が国の対応は、まさに、この「ペーパー・プロテスト」であったが、今回の提訴により、1962年の申し入れから50年も経っているとはいえ、ようやく「ペーパー・プロテスト」から脱却するということになる。(つづく)
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