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2012-08-07 06:52

国益忘却の野田と谷垣は顔洗って出直せ

杉浦 正章  政治評論家
 どう見ても首相・野田佳彦の大誤算だ。自民党の出方を甘く見た。おまけに自民党総裁・谷垣禎一との“解散密約”をほごにした。ガラス細工の上に乗っているのも気付かずに、自民党長老ばかりに片寄る副総理・岡田克也の情報に乗りすぎて、楽観視しすぎたのだ。この結果、千載一遇のチャンスであった消費増税法案を累卵(るいらん)の危うきに置く結果となった。お盆を前にして与野党の政権亡者達が、ときの声を上げているが、消費税がつぶれて日本売りの機会を虎視眈々(たんたん)と狙っている外国のハゲタカ・ファンドを喜ばせていいのか。政局一辺倒の小沢一郎を元気づけていいのか。次世代に借金返済をすべて押しつけるのか。与野党の政権亡者達には「国益」の原点に戻り、おみおつけで顔洗って出直せと言いたい。谷垣の野田に対する警告は度々発せられていたが、一番激しかったのは8月2日の発言だ。「俺にけんか売っているのかという気持ちを正直、持っている」とまで述べたのだ。野田が連合会長の古賀伸明に、平成25年度予算編成に意欲を示したことに対しての発言だ。この異常に激しい反応の裏には6月中旬に数度行われた秘密電話会談の“約束”がある。

 野田は、早期解散に含みを持たせて谷垣を説得したのだ。谷垣にしてみれば、野田が予算編成までやるとなれば、年末以降の解散となり、「解散密約」を“こけにされた”ことになる。野田の新年以来の解散に前向きな発言が、法案の衆院通過と共に消極的となったことと合わせれば、野田が民主大敗退の選挙情勢調査で慄然として方向転換しようとしていることが分かる。この野田の方向転換が、事ここに到った事態の最大の原因であろう。これに加えて、野田は自民党内の情勢分析を誤った。「岡田情報」による森喜朗、古賀誠、伊吹文明らの甘い話しばかりに乗って、同党内の厳しい空気を見誤った。折から自民党内は、父親の小泉純一郎にけしかけられたといわれる息子の進次郞が、こともあろうに若手を募って、「消費税より解散」ののろしを上げ、執行部を揺さぶり始めた。元より「政局最優先」の純一郎は、この機会を解散への絶好の機会ととらえており、消費増税など眼中にない。進次郞はもう少し筋を通す男かと思っていたが、「政策」より「政局」を選ぶとは、やはり父親の操り人形的な存在であったことがばれたことになる。3党合意の旗振り役であった伊吹は、党内情勢を見て音より早く「解散」を選択した。

 置いてけぼりを食らったのが公明党だ。支持団体創価学会の反対を押し切って3党合意に参加したために、引っ込みが付かない。代表・山口那津男は慌てて自民党の不信任案上程に「一体改革を台無しにする。3党合意を結んだ大義が失われる。国民に説得力の欠ける行為であり、断じて避けるべきだ」と反対の声を上げた。発言には、いきおい学会対策の側面がある。野田が打開を図る道はこの公明党を抱き込むしかあるまい。野田が7党不信任案を「心ある野党と連携しながら否決する」と述べているのは、公明党抱き込みを意識しているからに違いない。公明党内は、7党不信任案反対で固まっているものの、自民党が出すという「野田自身の不信任」なら賛成せざるを得ない、という姑息(こそく)なる主張もあり、ふらついている。 このように永田町は総選挙有利と判断した自民党が、消費増税法案を捨ててまで早期解散へと突き進むという、卑しげな党利党略に凝り固まりつつある。

 一方で、民主党は浮動票の「風」で政権を取ったことを忘れて、少しでも解散を遅らせ何が何でもパイを守ろうという“さもしい根性”が前面に出てきた。これも消費増税法案などはどうでもよいのだ。国会を火遊びの場と心得る小沢一郎主導の7党不信任案などは、不遇をかこつ弱小政党のうっぷん晴らしにすぎない。出番が意外に早く来て喜ぶ小沢の高笑いだけが聞こえるようでもある。そこには消費増税法案という国の存亡にかかわる重要法案への思いなどはかけらも見いだせない。政治家は「政局」に血道をあげる時ではない。ここは「国益」の一点に立って解決するしか道はない。野田は、解散を遅らせても、構造的な党勢退潮を食い止める道などないことを知るべきだ。「一体改革に政治生命をかける」と言ってきた以上、ここが政治生命のかけどころであることを知るべきだ。幹事長・輿石東らの主張を排して、何よりも優先させて消費増税法案を成立させるべきだ。それには早期解散を約束するしかない。谷垣も、政権亡者か飢えた地獄の餓鬼のように政権復帰を求めずに、解散時期で妥協をせよ。不信任案を上程しても、解散を恐れることでは一致する民主党は、ほぼ結束して否決に回るという流れになって来た。こじれた場合には、衆院での消費税再可決という非常手段を使ってでも、今国会で法案成立を図るべきだ。両者とも今ほど政治家の矜持が問われる時はないと知るべきだ。
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