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2012-07-27 06:34

“多数説”となった臨時国会解散説を分析する

杉浦 正章  政治評論家
 なにやら筆者が10日前に書いた“臨時国会解散説”が永田町の多数説となってきたそうだ。元官房長官・町村信孝が言明した。これも、常識になりつつある「野田再選」と併せて、2大政党の党首は、9月に「野田と谷垣の再選」で秋の解散・総選挙に臨むという潮目が出てきたのだ。しかし、まだまだ油断はできない。古狸の自民党は時々死んだふりをするからだ。今国会解散の目も否定出来ない。その証拠には、自民党総裁・谷垣禎一は8月上旬の消費増税法案成立に固執している。何が何でも今国会での解散に追い込もうとしているのだ。町村は、総裁選に手を挙げているのだから、いくら町村派のオーナーでも、元首相・森喜朗が引退表明に連動して谷垣再選を支持したことは、不満であったはずだ。それがどんな根回しがあったのか、森に同調するともとれる発言をしたのだ。7月25日仙台市で衆院解散・総選挙の時期に関し「10月に臨時国会を召集して解散し、11月に投開票というのが、永田町の多数説だ」との見方を示した。さらに加えて「一番早ければ9月上旬に解散、月末選挙だが、民主党は選挙が一日でも先になればいいと考えている。野田佳彦首相も、解散を後ろ倒しにしている」 とも付け加えた。森は谷垣と首相・野田佳彦が再選した上での臨時国会解散を唱えており、軌を一にすると取られてもおかしくない発言だ。

 町村も、立候補表明はしたものの、党内的に支持者の広がりが見られず、9月の総裁選は森と同調して谷垣支持へと動く可能性を視野に入れ始めたことを物語っている。しかしその一方で町村は、26日の派閥会合では、あれだけ明言した森の「谷垣再選容認」を「必ずしも事実でない」と否定したという。揺れる心理状態を見せているが、こちらは派内の求心力がなくなるのを恐れての発言だろう。「野田再選」の方は、政調会長前原誠司に続いて外相・玄葉光一郎も「外交をやっていて、首相の首をすげ替えることの不毛を感じている。首相がくるくる代わるのは大変な国益の損失であり、首脳間の信頼関係がなければ、北方領土交渉も最終的に結果が得られない」と発言、再選支持に回った。注目すべきは、民主党最大の支持団体である連合会長・古賀伸明も「5年で6人の首相が誕生した政治はよくない。続投すべきだ」と野田の再選を支持したことだ。これで、よほどのことがない限り再選への流れは固まってきたと言える。よほどのこととは、早期解散による代表選前の総選挙で民主党が敗退して、野田が党内の支持を一挙に失うケースである。

 焦点は、野田が臨時国会解散を野党に確約できるかどうかであろう。自民党にとっては確約がなければ、党勢後退の現状からいっても遅い方がよいに決まっている解散・総選挙を、野田がずるずると先延ばしにしかねない。現に民主党幹事長・輿石東は、大本命であるはずの消費増税法案の採決を先延ばしにしてでも、解散・総選挙への流れを押しとどめようとしている。自民党は激怒して、民主党にねじ込み、結局採決の前提となる中央公聴会を来月6日と7日に行うことで26日合意した。この結果10日前後の採決と成立の目が出てきたことになる。自民党としては採決直後から態度を“豹変”させて、一挙に野田を解散・総選挙に追い込もうとするだろう。したがって8月15日の旧盆休みに入る前に最大の山場を迎えることになる。その手段としては、衆院に内閣不信任案、参院に首相問責決議案の上程がある。消費増税法案採決でさらに15人以上の民主党離党者が出るか、多数の欠席が出れば、不信任案は可決され得る。問責の可決は確実だ。

 谷垣としては、ぎりぎりまで野田を追い詰めなければ、解散の目は出ないと思っているに違いない。ここで可能性として考えられるのは、「8月解散9月選挙」「9月解散10月選挙」「10月解散11月選挙」の3つの選択択であろう。最初の「8月解散」は不信任案成立のケースだ。「9月解散」は同月8日までの会期末ぎりぎりに野田が解散に追い込まれるケースだ。問責決議が通った場合などに考えられる。そして町村が「永田町の多数説」と唱えた「10月臨時国会冒頭の解散」だ。このケースは民・自・公党首が話し合いで解散時期を野田に誓約させる方式となるだろう。前提として赤字国債発行法案を冒頭で処理した上での解散となる可能性が高い。9月の党首選挙は民主、自民両党ともクリアした上での解散・総選挙となる。さらに先延ばしして「年末解散」や「来年の通常国会冒頭解散」の可能性もゼロではないが、現段階では想定外だ。野田は、消費増税法案を成立させた歴史に残る首相となるが、これだけ国論を2分する大事を成し遂げて、解散をさらに先延ばしするのは、憲政の常道に反する。解散先送りはせいぜい臨時国会までが限度だろう。堂々と消費増税達成で民意を問う事こそが、総仕上げとして不可欠であることを知らなければなるまい。
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