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2012-06-26 06:43

マスコミは小沢の“悪あがき”に踊らされるな

杉浦 正章  政治評論家
 歌の文句ではないが、「何を荒(すさ)ぶか小夜嵐」だ。たかだか40人の“烏合(うごう)の衆”にマスコミは踊らされ過ぎではないのか。たとえ「新党」に発展しても、何の理念も展望もなく、国を担う気概もない。それよりも大きな潮流を見据えるべき時ではないのか。国の命運を左右する消費増税法案を核に与野党がまがりなりにも政策合意に達して、法案の衆院の通過を図ろうとしているのだ。その後解散・総選挙を経れば、大連立はともかく、政策ごとの部分連合も進むだろう。「決められる政治」が芽生えているではないか。マスコミは民主党元代表・小沢一郎の最後の“悪あがき”などに、惑わされるべきではない。先に小沢の行動を「蜘蛛の糸にすがる」と例えたが、その通りとなって来た。自分だけがすがるのならまだ勝手だが、何も知らないチルドレンに「すがれ」とけしかける。しかし、さすがの半可通議員らも、正常な感覚を持つものは「これは危ない」と手を離しはじめた。6月25日夜の段階でグループに集まったのはたったの40人だ。離党・新党を決意している数とほぼ同数とみられている。80人と言われているグループの半分でしかない。これに国民の誰もが首相でないことを喜んでいる鳩山由紀夫が加わった。

 象徴的なのは、反対にもかかわらず、テレビで言を左右して、公明党の斉藤鉄夫から「見苦しい」と面罵された川内博史が、「甘い処分」と聞いてから、突然「反対」と公言し始めたことだ。かれこれ60人あまりが造反することになりそうだが、どうってことはない。法案可決の流れは微動だにしない。こうした動きの元凶は、小沢と組んでいる幹事長・輿石東にある。25日の特別委員会でも、首相・野田佳彦を前にして元官房長官・町村信孝が「三党合意を少しでも遅らせようとしている輿石幹事長は不愉快だ」など「不愉快」を3度も繰り返した。まったく昭和の「妖怪」が岸信介なら平成の「不愉快」が輿石だ。もちろん輿石は、岸のような大業を成し遂げる政治家ではない。小沢の小間使いにすぎない。輿石はここに来て公然と造反者への甘い処分を発言し始めた。裏でしきりに甘い情報を流し続けて、集まるべき数が集まったから「ころやよし」というわけであろうか。輿石の対応は憲政の常道からいってもおかしい。「政治生命をかける」と時の首相が言う法案に反旗を翻せば、その行動は内閣不信任案賛成の投票行動と同一視すべきことである。普通の法案への反対投票とは明らかに異なり、除名に値する。もっとも方向感覚を持ち合わせない輿石には無い物ねだりかも知れない。

 なぜなら、分裂を避けて少数与党化を回避するということ自体が無意味なのだ。民主党政権の大樽(だる)はもう“たが”が外れてあちこちから水が噴出し始めているのだ。それをやせ細った骸骨みたいな手で押さえようとしても、こっちを押さえればあちらから噴出してしまうのが実態だ。前途に民主党を待っているのは、少数与党化などはまだいい方で、選挙に大敗して“野党化”も十分ある状況なのだ。早かれ遅かれそうなるのであって、政治家にはあきらめが肝心なのに、分かっていない。小沢も全く同じだ。小政党を作って、先行して離党させた新党きづなの9議席と合わせて不信任案を上程できる50議席以上を獲得しようとしているのだろうが、それで騒げるのはせいぜい解散・総選挙までと相場が決まっている。「反増税と反原発」を掲げたからといって、小沢がトップの政党を国民が支持するわけがない。蜘蛛の糸は切れて、大半が落選するのだ。だいいいち「新党」「新党」と言うのなら、堂々と離党したうえで反対票を投ずべきなのだ。政局は魑魅魍魎(ちみもうりょう)が跋扈(ばっこ)すればするほど面白い。マスコミが面白おかしく政治の「部分」を報道してもよい。しかし朝日も、読売も、天下の大新聞が、今日の1面の主見出しに「小沢」だの「新党」だのの文字を躍らせるのはいかがなものか。

 朝刊はトップで「消費増税法案きょう民自公で衆院可決」が正しい。「与野党合意」の流れは、マスコミも温存して慈しみ育てなければならないのだ。ここで政党政治の軌道を正しいものに乗せなければ、疝気筋がしゃしゃり出て未曾有の混乱となりかねない。原発再稼働問題で何も知らないことが立証された大阪市長の橋下徹が、懲りずに、はやりにはやって「維新」とやらの風を吹かせようとしている。晩節を汚すことも知らずに都知事・石原慎太郎が年を忘れて権力への野望をむき出しにしている。何も出来ないことがわかり切っている新種の“チルドレン”を「風」に乗せて、またまた当選させて、「最低でも県外」的な茶番劇を繰り返す余地は、もうこの国の政治にはない。こうした中で自民党から部分連合の声が生じていることは注目に値する。自民党総裁・谷垣禎一が25日の講演で「大連立よりも、今度の消費税などでやったようなパーシャル連合を模索する方が現実的ではないか。民主党はもう少し政策的な純化が必要だ」と発言した。同党内では既に元幹事長・古賀誠も20日に「部分的とか、閣内に協力を求めることなどを、リーダーが考える状況に来ている」と述べている。野田はこの機運を見逃すべきではない。少数与党になろうが、野党に転落しようが、野田の「信念の政治」は消費増税法案で証明されており、再起の機会はいくらでも来るのだ。
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