国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2012-04-22 00:03

(連載)わが国の北朝鮮制裁の限界(1)

緒方 林太郎  衆議院議員(民主党)
 北朝鮮によるいわゆる「ミサイル」発射について、追加的制裁の議論が出てきています。これは、時折誤解を招くので、ある程度は正確なところを知っておく必要があります。まず、国連安保理による制裁ですけども、2回の制裁決議が通っています。(1)2006年の決議1718 :臨検の実施(ただし、あくまでも協力要請)、奢侈品の禁輸、戦闘機・軍艦・ミサイルなどの特定の兵器の禁輸とそれらに関連する物資や技術やサービスの移転や調達の禁止等。(2)2009年の決議1874 :武器禁輸、領域・公海における臨検・押収、大量破壊兵器・ミサイル関連計画・活動に資するすべての金融資産等の移転防止、すべての加盟国及び国際金融機関等に対する新規援助の禁止等。

 基本的には武器・兵器関係での制裁が主となります。中国やロシアの拒否権の事を考えれば、今後も一般的な禁輸は難しいでしょう。せいぜい、兵器関連での資産凍結や渡航禁止の対象となる人物、企業のリストを拡大するくらいが精一杯だと思います。それとて、リスト拡大の範囲ですら制裁委員会でどの程度合意できるか分かりません。

 では、日本は対北朝鮮でどのような独自の措置を講じているかというと、(1)輸出入の全面禁止、(2)北朝鮮居住者に対する300万円以上の支払いの届出義務、(3)北朝鮮を仕向地とする10万円以上の現金の持ち出しの届出義務、(4)人の移動制限、(5)チャーター飛行機の乗り入れ、船舶の入港禁止といったところです。つまり、外為法の枠組みでは、輸出入だけが全面制裁となっていて、カネの流れは限られた兵器関係だけが制裁対象になっているという意味合いになります。(2)や(3)は単なるお手続きに過ぎず、いわゆる制裁には含まれません。制裁法のプロの目から見ると、単に届ければいいだけのものなど制裁ではないのです。

 したがって、既に直接の輸出入は、制裁が効果を示していて、統計上はゼロになっています。単に統計上そうなっているだけで、実際は行われているとか、第三国迂回のものがかなりあるとか言われていますが、把握できる限り統計上はそうなっています。さて、これから追加的に打てるものがあるかというと、支払、資本取引、直接投資、特定資本取引、役務取引といったようなもの、つまりは、カネやサービスの流れに当たるところを許可制にかからしめるというのが、誰もが思うことです。これが一番有力なのでしょうけども、これはなかなか難しくて、「北朝鮮」という括りで全部許可制にしてしまうと、一部「切りこみ過ぎてしまう」部分が出てしまう可能性があります。最近の制裁スキームの流れは、スマート・サンクションでして、個人や法人をリストで特定したかたちでの制裁が主流です。つまりは、けしからん対象だけに制裁をして、対象国の一般の方には影響が出ないようにするということです。(つづく)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム