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2012-04-20 09:46

(連載)中国ではロケット残骸物の落下は日常的な出来事(2)

酒井 信彦  日本ナショナリズム研究所長・元東京大学教授
 一昨年9月5日、通信衛星「シノサット6号」を、長征3号C型ロケットで打ち上げ、その補助エンジン(ブースター)3基すべてが、貴州省黔東南ミャオ族トン族自治州の鎮遠県に落下した。ブースターは、長さ約10メートル、直径約2メートルの巨大なもので、「落下時に大気に極めて大きな衝撃を与え、周囲の直径60メートルの草木が枯れた」。またこのブースターには、「推進剤に非対称ジメチルヒドラジンと四酸化窒素を使用。いずれも強い毒性がある」という。一昨年1月17日、測位衛星「北斗」を長征3号C型ロケットで打ち上げ、ブースターが貴州省遵義市内に落下した。「落下地点に大きな穴が開き、約30メートル以内にあった草木が焼けこげた」。

 2007年10月24日、中国初の月探査衛星「嫦娥」を長征3号A型ロケットで打ち上げ、その残骸が貴州省に落下した。貴州省内の具体的な地名は出てこないが、「サーチナ」にはその時の写真が二つ掲載されている。一つは「耕地に落下したロケットの一部。推進剤のタンク部分とみられる」と説明があるもので、私は中国のロケットについては全くの無知であるが、写っている人間と比較すると、C型のブースターよりかなり大きく見える。もう一つは、「貴州省民家を直撃したロケットの残骸」とあるもので、太くてかなり長さのあるパイプが、民家を破壊している。

 以上の例から分かるように、ロケットの落下する地域は大体決まっているようである。それは貴州省の東部で、特に黔東南ミャオ族トン族自治州の鎮遠県というところである。そうなる原因は、衛星の打ち上げ場所である発射センターが、四川省の涼山イ族自治州の州都である西昌であり、そこから真っ直ぐ東方に打ち上げるからである。したがって、ロケットの形式にも寄るのであろうが、落下地点は事前に予測でき、約10万人が避難している。今までには人的被害も、かなりあったことであろう。

 つまり貴州省の東部地域は長年にわたって、落下物と毒ガスの恐怖にさらされ続けているのである。こんな人道に反することが平気でできるのも、この地帯が地名からも分かるように、非中国人すなわち「少数民族」地帯であることが、かなり関係しているのではないだろうか。私の知る限りにおいて、北朝鮮のロケット発射に大騒ぎしているマスコミが、中国における悲惨な現実をまともに報道するのを見たことがない。中国で公表されていることでも、中国の国家権力にとって好ましくないことは、日本人に知らせるのを自粛するのである。彼らが中国人の精神奴隷であることの、何よりの証拠である。(おわり)
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