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2012-03-25 21:32

(連載)日本は中国の海洋支配強化に対応せよ(2)

高峰 康修  日本国際フォーラム 客員主任研究員
 こうした中国の海洋支配強化に対してやるべきことは、何を措いても、我が国が粛々と管轄権を行使することである。管轄権の行使は、実効支配の要諦である。その主体は、第一義的には海上保安庁の役割である。これを強化する名目で、海保法改正案や外国船舶航行法案が国会に提出されている。前者は、指定する離島における海上保安官の管轄権を明記するものであり、意味があろう。ただ、後者は、領海に侵入した船舶に対して海保が立ち入り検査なしで退去命令を出せるようにするものであり、立ち入り検査は管轄権行使の重要な要素であるから、改正は管轄権の強化とは逆行するのではないかとの疑念が残る。

 次に、当然のことながら、海自も海上警備の重要な主体である。海保の役割と海自の役割を有機的に結合させ、シームレスな海上警備態勢作りを目指さなければならない。ちょうど、中国が海上警備組織の一元化を模索しているように、我が国においても、縦割りの弊害が生じないよう極力排する努力が重要である。ところで、管轄権の行使において何よりも重要なことは、当局の管轄権行使に、「中国への配慮」などといった理由で政治が不当に介入しないことである。これは、2010年の尖閣沖衝突事件の最大の教訓であり、法律自体もさることながら、法執行が適正に運用されるかが、より重要である。

 しかし、日本政府が今月7日に、日本のEEZの基点となる離島などのうち所有者のいない23か所を国有財産として登録した際、尖閣周辺の離島を対象から外すという愚を犯している。このような態度がいかに有害であるか深く肝に銘じてもらわなければ困る。尖閣諸島は、民間所有の島も含めて国有化すべきで、海保の巡視船が接岸できるような港湾を整備したり、あるいは、アメダスなどの気象観測施設を設置したりするべきであろう。

 そして、その次にくるのは純軍事的分野となる。それについては、ここでは詳述しないが、海空の防衛力増強、東シナ海における日米両軍のプレゼンス強化が必須である。中国のやり方は、国際法を恣意的に解釈するなど、決して容認できるものではないが、その国益保護にかける執拗さは見習うべきであろう。(おわり)
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