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2012-03-24 13:44

(連載)日本は中国の海洋支配強化に対応せよ(1)

高峰 康修  日本国際フォーラム 客員主任研究員
 中国による東シナ海・南シナ海といった海域における海洋権益確保に向けた実効支配の強化が、制度面と行動面の両面で、さらに進んでいる。人民解放軍の羅援少将は、現在9部門にもわたっている中国の海上警備部門を一元化して、国家海洋省(仮称)あるいは国家海洋委員会(同)の下に所属させ、日本の海上保安庁のような海上警備組織を創設することを提案している。例えば、東シナ海にもよく出没する巡視船「海監」は、国土資源省国家海洋局の所属であり、同じく、漁業監視船「漁政」は農業省漁政局の所属である。9つもの部門が同じ海洋警備という任務に携わるのは、いかにも効率が悪く、中国の官僚主義の弊害である。それを一元化して効率化するというのは、もちろん中国の内政問題であり、本来は他国がとやかく言う話ではない。

 しかし、中国が、台湾や、南シナ海、そして最近では、人民日報が尖閣をも「核心的利益」と呼んで、なりふり構わぬ海洋進出と権益確保を目指す意図が明白であるから、海上警備部門の一元化による効率化にも警戒の目を向けざるを得ないのは当然である。ただ、海上警備部門を一元化すれば、縦割りの弊害としての指揮系統の混乱による不測の衝突が起こることがなくなると期待され、周辺国にとってメリットもあることは指摘しておきたい。今後の動向を注視する必要がある。

 また、3月9日までに、中国政府は、海洋観測予報管理条例を公布した。これは、中国の領海や管轄海域において観測予報活動を規制するものであり、外国や国際組織にも中国の法規の遵守を求めている。こうした法令も、それ自体、あっても全く不思議ではないものだが、問題なのは、中国が排他的経済水域(EEZ)や大陸棚について、国連海洋法条約や海洋に関する慣習国際法とはかなり異なった独自の解釈をしている点である。それに基づいて海洋観測予報管理条例を適用し、係争海域における相手国の活動を不当に圧迫する他、米国による米軍の作戦に必要な海洋調査を妨害する根拠にもする意図があるのであろう。

 3月16日から18日には、上述の、国家海洋局の巡視船「海監50」などが、尖閣付近から東シナ海のガス田海域にかけてを巡視した。尖閣近海では、我が国の領海を侵犯し、17日には、白樺ガス田付近でヘリコプターとの合同訓練を行なっている。そして、「巡視活動中、日本の船舶や航空機の妨害を排除し、わが国の釣魚島および周辺諸島の主権と管轄権を公に示した」「今後とも国家の主権を保護し、国家の海洋主権を防衛する」と宣言している。我が国の尖閣への実効支配を揺るがしたとは到底言えないが、放置してよいはずはない。ガス田に関しては、日本は既に中国による支配を実質的に許してしまっている。(つづく)
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