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2012-03-20 13:30

「日・ASEAN対話」は、「海洋」だけではなく、「空間」も議論せよ

松井 啓  元駐カザフスタン大使
 3月15日にグローバル・フォーラム(GFJ)が主催した第9回「日・ASEAN対話:ASEAN統合の未来と日本の役割」に出席させて頂いた。会場では発言時間に制約もあったので、この場をお借りして、私の感想を述べる。

 本会議Ⅱ「東アジアの安全保障と日・ASEAN協力」での討議では、海洋上での航行の自由、津波等の災害情報の共有・警告システムの開発協力、海難救助協力、不法漁獲、海洋汚染、海賊、越境武器・麻薬取引等の不法行為の取り締まり協力、沿岸警備協力、海洋境界画定の平和的解決等について言及がなされた。私は更にウナギ等の回遊魚に関する調査・情報交換、海洋資源の調査・研究協力を追加しても良いのではないかと思ったが、全体の印象としては、もっぱらこの地域の海洋の自由航行と安全保障が念頭にあるとの印象を受けた。

 しかしながら、このような対話の影の主役は「責任あるステイクホルダー」となることを期待される中国であることは明白である。中国は海軍力の拡充のみでなく、人工衛星やミサイル開発も加速させている。更に北朝鮮は4月中旬にはロケット(実質的軍事ミサイルとみられている)発射を宣言しており、1段目は韓国沖合に落ち、本体は沖縄の先島諸島上空を飛んで、2段目はフィリピン沖合に落下すると予告しており、今後とも同様な行為に出る可能性がある。

 ASEAN諸国が共通に懸念している中国の経済的、政治的、軍事的強大化、及び今後の北朝鮮(現時点では地域の国際的枠組みの中ではARF<アセアン地域フォーラム>のみに参加)の軍事的冒険を考慮すれば、私は未来志向で更に一歩進めて、「空間」(スペース)の安全保障も検討することを提案する。即ち、航空機(民間機、軍用機を問わない)の安全航行、ミサイル、ロケット等による領空侵犯、サイバーテロ・攻撃等に関する情報交換や対策の協力関係促進、更に、渡り鳥の生態・季節移動・病原菌の伝播等に関する調査・情報交換等についても、この「日・ASEAN対話」の対象とすることを提案する。気象観測・GPS(全地球測位システム)用人工衛星打ち上げ等については、日本は中国や韓国に一歩先んじてASEAN諸国に協力できるのではないかと期待している。

 なお、在京外国人出席者の中には、中国大使館から書記官が出席し、発言していたのは、さすがと感心した。次回からは、このような対話に関心あると思われる韓国、インド、オーストラリア、台湾等からも大使館員や代表部員が出席するように、勧誘してはどうだろうか。
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