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2012-03-02 06:55

胸のすくような政治の舞台回し

杉浦 正章  政治評論家
 民主・自民の極秘党首会談は案の定賛否の声がごうごうと巻き起こったが、世の中目明き千人、盲千人だ。政局が見える者は理解し、見えない者は怒る。はたしてその実態はと言えば、久しぶりに胸のすくような政治の舞台回しが行われたということだろう。首相・野田佳彦も自民党総裁・谷垣禎一も否定しているが、全紙に報道された以上会談はあったということになる。今後の政局の方程式は極秘会談を前提として組み立てられていくのだ。追い込まれた小沢一郎がどう巻き返せるのかが焦点だ。情報を総合すると2月の初め頃から極秘会談への“うごめき”があった。谷垣から誘いを掛けたという説が濃厚だが、野田が働きかけたという説もある。鐘が鳴ったか、撞木が鳴ったか、鐘と撞木の合いが鳴る。つまり出会いという秘め事が鳴らしているのだ。双方の足元が揺らいで、よろめいて、“ごっつんこ”して鳴ったのかも知れない。谷垣は2月25日の会談に先立って19日に、会談の「ヒント」となるような発言をしている。17日の公判後の声高な小沢の反消費税・倒閣発言に関連して「野田首相は野党に協議を求めるなら、まず小沢元代表とさしで話し合い、『賛成するなら一緒にやりましょう』『反対するなら党を出て行ってください』と言うべきだ」と、「小沢切り」をけしかけたのだ。

 恐らく会談打診の後の「ダメ押し」というか、「誘い水」の類いに位置づけられる発言だったのだろう。これに野田が反応して、25日の会談になったようだ。極秘会談が漏れた結果、政治の舞台は様変わりした。まず、小沢一郎が真っ青になった。当選一回生を招いた3月1日の会合のあと、車に乗るときの顔を読んだが、これまでに見たことのないような厳しい表情であった。かつて「小沢幹事長辞任」をボディランゲージで言い当てたが、小沢の表情から見ると、会合はお通夜のようであったに違いない。いくら一年生でも、小沢が窮地に追い込まれたことくらいは分かる。小沢が「話し合い解散はない」と説得しても、「そうかなぁ」となるのだ。何故小沢が身の危機を感じたかといえば、戦略が崩れるからだ。小沢は政局のターゲットを消費増税法案の国会提出後の今月末に定めていたといわれる。小沢の戦略とは、せっせと会議や会合を繰り返して、何も知らないチルドレンをとりまとめることに他ならない。チルドレンを50人まとめられれば、消費増税法案を衆院で否決できるのだ。その戦略が極秘会談で根底から崩れかねない様相となったのだ。

 一方、野田は「話し合い解散」、つまり「法案成立・解散」を武器にすれば、自民党を誘い込むことが出来る。小沢一派が反対しても、衆参両院で可決して、成立へと持ち込めるのだ。極秘会談はその流れを確認し合うものであった可能性が高い。この民主、自民連携の動きは、小沢にとっては「想定外」であったのだろう。チルドレンをまとめても無駄になる可能性があるのだ。それに政界再編と言っても、今回は小沢主導型になる可能性はほとんどない。野党は一致して小沢の証人喚問を要求しており、「刑事被告人」のリーダーシップで再編をしようというようなピント外れは、「何でも政局」の亀井静香くらいしかいない。さらに極秘会談は、言いたい放題の大阪市長・橋下徹もけん制する形となった。橋下も、「石原新党」をうかがう石原慎太郎も、与野党激突の間隙を縫って漁夫の利を占めるというのが基本戦略であろう。その激突が回避され、正常な姿で国家財政の危機をとりあえず救うことのできる超重要法案が成立となれば、出る幕は薄れるのだ。

 このように極秘会談は“八方にらみ”の様相を濃くしたものであった。谷垣を代議士会で河井克行が「野田内閣は、もうまもなく沈没する。その船長に救命ボートなど我が党の総裁が差し伸べることなど決してなさらないと、私は心から信じております」と突き上げたが、「昼行灯か」と言いたい。なにもしなければ沈没するのは自民党であることが分かっていない。4期生にもなって政治が読めないようでは、やめた方がいい。野田に対しては、何でも反対の前農相・山田正彦が「消費増税法案を成立させ話し合い解散になれば、我々も落選して国会に帰って来られない。増税反対で命がけで行動する」と発言したが、「滑稽」と言いたい。一議員の落選など枝葉末節だ。ここは政治家が党利党略、私利私欲でなくて、野田のように身を捨てて消費税を導入しようとする場面であることが分かっていない。いまや軽蔑の的ルーピー鳩山由紀夫の批判など、冬の蚊のようなもので、刺す力もない。極秘会談の効用はまだ誰も指摘していないが、今後の国会運営や政局に当たって、電話会談が可能となったところにある。「会談が早すぎた」とか「公になったからもう会談できない」との見方があるが、逆だ。やろうと思えば“しこしこ”と携帯の短縮ダイヤルですぐつながり、「どこでも会談」が可能なのだ。極秘会談を携帯で重ねて、仕上げを図れるのだ。 
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