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2012-02-23 06:52

小沢、消費税政局で“激突”を宣言

杉浦 正章  政治評論家
 ついに春の突風「春疾風(はやて)」が、小沢一郎から吹いた。2月22日夜、消費増税法案の3月下旬の閣議決定に結束して反対するように、グループ内に呼びかけたのだ。23日付朝日新聞のインタビューでも小沢は、解散・総選挙前の政界再編に言及しており、政局は民主党分裂もあり得る危機的状態に突入しそうだ。当然野党は民主党内の動きに連動して内閣不信任案を上程するものとみられ、解散・総選挙も視野に入ってきた。3月危機が現実のものとなり始めたのだ。NHKによると、小沢は近い議員らとの会合で、消費増税について「時期的に、法案の閣議決定が最初の一つのポイントになる。閣議決定は簡単ではない」と明言、閣議決定に結束して反対する方針を明らかにした。さらに小沢は「消費税の増税は、いくら野田君が頑張ろうとしても、世論が後押ししないかぎり無理だ。これからの世論の動向は、われわれが思っているよりも厳しいものがあるはずで、そういう世論を受けて、なお突っ走ることは、おそらくできないだろう」との見通しを述べた。

 一方、朝日とのインタビューはもっと生々しい。小沢は、首相・野田佳彦が消費増税解散に踏み切った場合にについて「民主党内閣、民主党自身の終わりだ。選挙前の再編を含め、国家が混乱しない方策を考えなければならない」と、野田政権に見切りをつけたとも受け取れる発言をした。政界再編の時期について「選挙前にやらないとダメ」と繰り返した上で、「安定した過半数の政権ができるようにしないといけない」と消費税反対での政界糾合に意欲を示した。これまで、小沢は自らの議員グループの会合を頻繁に開き、100人近い出席者らに消費増税反対の姿勢を明らかにしてきた。さる16日の前首相・鳩山由紀夫、幹事長・輿石東との会談でも、党分裂の危機に言及した模様だ。鳩山が「このままいったら党が大変なことになる」と内容を漏らしている。

 小沢は、自らの裁判が秘書の証言が証拠採用されなかったことで、有利になったと勢いづいている形であり、4月の判決を待たずに行動を開始した形となった。背景には、判決がクロと出た場合にはかえって身動きがとれなくなるとの判断があるものとみられる。小沢は朝日に「野田さんが思い直して初心を忘れずに努力してもらうことを、最善の策として望む」とも述べ、首相・野田佳彦の翻意を促している。しかし、消費増税に向けての野田の姿勢は全くぶれていない。22日の衆院予算委でも「私は党代表選で明確に消費増税をかかげ、素案の決定も時間をかけて着々と議論し、握手と拍手で終わった。強引な意思決定はやっていない」と増税大綱決定に至る手続きに瑕疵(かし)はないことを強調した。既に、不成立の場合の解散・総選挙の可能性にも言及している。この結果、小沢の発言はまさに野田との正面衝突の方向を示していることになる。野田と小沢の間に立った形の輿石は、野田、小沢、鳩山との4者会談で調整を図る動きを見せているが、まだ定かではない。

 小沢が今後具体的な閣議決定反対戦略をどう描くかだが、閣僚の大勢は消費増税賛成であり、反対を大仕掛けに実現することは難しい。やはり反対している国民新党と連携することも視野に入れているものとみられる。代表亀井静香を通じて郵政改革相・自見庄三郎を反対させる。グループの防衛相・田中直紀も、反対して辞任という方向に持って行きたいのだろう。2人しか反対しなくても、十分起爆剤にはなり得る。野党も、小沢の動きを固唾をのんで見守る。自民党総裁・谷垣禎一は、「首相は野党に協議を求めるなら、まず小沢元代表とさしで話し合い、『賛成するなら一緒にやりましょう。反対するなら(党を)出て行ってください』と言うべきだ」と、野田の「小沢切り」をけしかけている。不信任決議や問責決議の提出時期もうかがっている。小沢が再編も辞さぬ反対に踏み切る姿勢を明らかにしたことは、自民、公明両党の早期解散戦略に大きく作用する。小沢グループが党分裂も辞さぬ構えとなれば、内閣不信任案が成立しうる。会期末の6月の決議上提を早める流れが生じるだろう。3月末から4月にかけての政局は民主党内の動きに、野党の思惑が絡んで、三つどもえ、四どもえの展開を見せることが予想される。さらに、大阪維新の会、「石原新党」など波乱要素も加わり、まさに何でもありの状況になるだろう。
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