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2011-12-26 09:50

(連載)領海の無害通航権について考える(1)

緒方 林太郎  衆議院議員(民主党)
 昔から「領海の無害通航権」について書いています。大学時代、六法も条約集も持たないいい加減な法学部生だった身なのですが、外務省条約課に配属されたのが運の尽きでして、すっかり国連海洋法条約を学ばされてしまいました。その流れです。国連海洋法条約第17条では、領海の通過には無害通航権が認められています。これは何かというと、「特に沿岸国に害悪を与えない限りは領海を通過していっていいよ」という規定です。そして、何が「無害(innocent)」かということについては、第19条に書いてあります。これが限定列挙なのか、包括列挙なのかについては、論争があります。

 この無害通航権は書いて字の如く「権利」でありまして、船舶は通航する権利を持っているわけです。したがって、日本的な解釈では「有害でないものについては、船種を問わず通航を認める」といった感じになります。しかし、他国には通航に際して届出や許可を要求している国がある、ということで調べてみました。ちょっと古い資料がベースですので、もしかしたら既に変更されているところがあるかもしれませんが、基本的な考え方は変わっていないはずです。

 と言っても、普通の商業用船舶について無害通航権を否定する国は見あたりませんでした。あくまでも軍艦や非商業目的の政府船舶についてどう考えるかということです。日本はこれらについても無害性を認めている一方で、世界には「軍艦イコール無害ではない」という考え方に立脚していると思われる国が結構あります。

 韓国は1995年の領海及び接続水域法において、軍艦及び非商業目的の政府船舶の領海通過に際しては、韓国外務省への事前通告を求めています。更には1996年の大統領令で許可を求めており、法律以上の要求をしています。また、中国は1992年の領海法において、非軍用船舶については無害通航権を設ける一方で、軍用船舶の無害通航権を否定しており、かつ違反船舶については軍が追跡する権限を付与しています。しかも、領海法においては、尖閣諸島や南沙諸島、西沙諸島を領土としています(この規定を将来フルに動員して、尖閣に軍を出してくる可能性は否定されません。この件はまた別途)。(つづく)
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