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2011-12-23 00:31

(連載)危機管理能力の無さを露呈した野田政権(3)

尾形 宣夫  ジャーナリスト
 わが国の安全保障と切り離せないこの事態に日本がどう向き合わなければならないかは、火を見るよりも明らかだろう。東アジア情勢の急変も予測しなければならないのだから、安全保障会議は的確な事態の把握に努めるのが当然だ。にもかかわらず、安保会議はわずか10分で終わった。メンバーが顔をそろえて首相の指示を聞いただけだ。予行演習の安保会議ではない。あまりにも緊張感に欠ける。

 総書記死去の事態を分析し、関係閣僚がそれぞれの分野から想定される最大限のシナリオを論じ合うのが当然だろう。ごく限られた情報しかないのは事実だが、政権は取りあえず政治判断を含めた可能性の論議からでも始めないようでは、危機管理の有無を問われる。政権にある政治家たる者は、率先して頭の回転スイッチを「ON」にすべきではなかったか。情報分析の不手際、状況認識の欠如ーーと、野田政権の危機管理は「初動」でつまずいた。そして、皮肉なことに参院で問責決議された一川防衛相と山岡国家公安委員長が、今回の事態対応の重要閣僚だった。野党は野田政権に危機管理能力なしとして、閉会審査を求めている。もちろん、両閣僚の罷免・更迭を求めてである。首相はまたも逃げのきかない野党の責任追及の場に立たされそうだ。

 ところで首相は、金総書記死去のニュースが飛び込まなかったら、あるいは朝鮮中央テレビの「特別放送」がずれ込んでいたら、予定通り新橋駅前の街頭演説に立っていただろう。街頭演説は大震災対応、原発事故対策、社会保障と税の一体改革などで、国民に直接語り掛ける初めての機会だから、大いに語ったかもしれない。

 だが、首相の到着を待つ新橋駅前の広場は政権を批判する人たちで雑踏していた。「原発反対」のプラカード、政権を批判する声が錯綜し、右翼の街宣も「従軍慰安婦」問題で負けずにがなり合うありさまだった。もし首相が車上で話し出したら、広場に集まった多くの聴衆の抗議、批判の声の渦に巻き込まれたかもしれない。そう想像できるほど、新橋駅前広場は緊迫感に包まれていた。気が抜けない年末となりそうである。(おわり)
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