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2011-11-26 09:22

(連載)米国のアジア太平洋進出とTPP関与の真意(1)

島 M. ゆうこ  エッセイスト
 最近、米国のアジア太平洋進出と環太平洋経済連携協定(TPP)関与の真意は、脅威的な中国の軍事力強化に対する米国の抑止政策で、中国を牽制するためのものであるとの疑惑と懸念が目だってきているようです。このような風潮に対し、米国政府は「そのような世論は間違っている」と真っ向から明言しています。11月16日の『ロイター』によるとオーストラリアの首相ジュリア・ギラードとの会談で、オバマ大統領は2500人の米国軍隊をダーウィンに駐留させる計画を発表した際、「中国を牽制し、疎外しようとするものだとの見解は誤りであり、平和を掲げる中国を歓迎する。しかし、大国となった中国は自由貿易と安全保障についてそれなりの立場を明確にする必要がある」と述べています。11月18日の『アサヒ・ジャパン・ウォツチ』によると、アジア太平洋研究所の理事であるリー・シャンヤング氏は「差し迫っては、中国もTPPの重要性を政治的に検討することはありえるが、関税の問題はさておき、環境保護、労働組合、国有企業など、多くの障害があるため、近い将来中国がTPPに参加するとは思わない」と述べていて、中国がTPP参加に積極的ではないことを示唆しています。いずれにしても、専門家は、日本は米国のアジア太平洋進出の目的を正確に知る必要があると感じているようです。

 米国国務長官、ヒラリー・クリントン氏は今後の10年間を『America\'s Pacific Century』と題して、米国の今後の包括的方向性を発表しています。これは、11月10日にホノルルで開催されたAPEC首脳会談でのクリントン氏のスピーチの原点になっています。声明は、今後のアジア太平洋における米国の位置を明確にしたものであり、その要点は、(1)アジア太平洋地域でのバランスのとれた貿易関係の促進、(2)貿易と投資の拡大、(3)同盟国安全保障の強化、(4)多国間組織の経済的・政治的統合と安定性の強化、(5)東南アジア及びインド洋における米軍駐在の増加、(6)民主主義と人権保護の促進であると思います。

 クリントン氏の声明で理解できることは、米国のアジア太平洋地域への進出は、過去10年間アフガニスタンやイラクにつぎ込んだ資源とエネルギーを、今後はアジアにシフトさせたい為であり、米国が現実的には経済崩壊に直面しているなかで、その経済を回復させるためには、視点をアジア太平洋地域に向けて、米国のリーダーシップを再びアピールする必要があるとの戦略であると思います。「2015年までに輸出を2倍に増大させたい」との具体的なビジョンを持つオバマ大統領の第一の狙いは、市場性の高いアジア太平洋諸国と強い外交関係を築き、「健全な経済競争、オープン、自由、透明性と公平性」を原則に、米国経済の建て直しを図ることのようです。

 中国の軍事力強化の問題に関しては、クリントン氏は「米国では中国の増大し続ける軍事力が米国の脅威になっていると信じている人達も存在し、一方中国では、米国が中国の発展を抑止するのではないかと懸念するむきもあるが、いずれもこれは誤解である」と力説しています。両国の繁栄は双方にとってプラスであり、「紛争より協力を基盤にすることの方がお互いに得るものは大きい」とし、「グローバルな責任と義務を全うするためには、一貫した積極的な協力がお互いに必要である」と述べています。更に「両国の軍事力に関しても、誤算やミスのリスクを避けるため、透明性を向上させる努力も行っている」とし、「米国と国際共同体は中国の現代化の努力と軍事力の拡大に注目し、対話を通してその意図の明確さを求めている。透明性の高い本格的な米中軍部間の交流と対話は両国にとって利益がある。従って、北京が長期的視野で、その対話に参加することを期待している」と述べています。米国側は、双方の信頼を基盤にし、世界の安全保障に中国も重要な役割を果たすことを求めており、東南アジア及びインド洋における米軍駐在の増加についても、クリントン氏は「人道的使命と地域の平和と安定により大きな貢献と支持が可能になる」ことを強調しています。(つづく)
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