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2011-07-28 10:16

(連載)「神々の闘争」から「神々の共存」へ(2)

六辻 彰二  横浜市立大学講師
 ノルウェーで発生した、オスロ官庁街爆破と労働党青年部襲撃の連続テロは、ヨーロッパを震撼させました。当初、欧米メディアではイスラーム過激派の関与を疑う識者の意見が支配的でしたが、その観測はものの見事にはずれたようです。「悪いものは外からやってくる」と考えたがる思考は、人間に共通のもののようです。

 ともあれ、伝えられている限りでは、極右的な思想をもつ30歳代の男性が、与党・労働党の寛容な移民政策に対する批判として起こしたテロ事件、というのが大よその構図のようです。ここからうかがえることは、流動化する現代社会にあって、「他人は他人」と思いながらも、そのなかでの孤立感に耐えられない人間が潜在的に数多くあるということです。

 これは、震災後の日本でも同様のようです。震災後、何かというと、外国籍のひとが母国(自国)に避難するのを批判する論調がありました。しかし、外国人が日本国外へ退避することは、ある意味で当たり前の反応です。ハイチ大地震のとき、国外退避しないで救護活動を続けた日本人シスターが賞賛の対象になりましたが、彼女の行為は「誰もができないことをしている」からこそ賞賛されたのであって、それを全ての人に求めることは、土台むりな話です。そもそも、全てのひとがそれをできるのであれば、それは賞賛されないでしょう。世界各地で自然災害があったとき、日本に帰国した日本人を日本国内で非難するひとがあったでしょうか。

 つまり、特に自然災害のような(あるいは金融危機や武力紛争なども含めて)突発的な大変動が起こったとき、「協力」の必要性を強調するあまり、容易にひとは「ナショナリティと協力」を結び付けます。いわば、「内と外」の論理です。関東大震災のとき、韓国出身のひとたちが虐殺されたのは、その例です。(つづく)
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