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2011-05-22 11:23

吉田・河村論争を読んで思ったこと

岡田 章一  元会社役員
 吉田重信氏と河村洋氏(および伊藤将憲氏)の間の丁々発止のやりとりを興味深く読ませていただいている。こういう問題の核心を突いていて、それでいながら紳士的な論争というのは、日本社会に欠けているものの一つであるだけに、それを可能ならしめている本欄をはじめとする日本国際フォーラム関係3団体の「政策掲示板」には深く敬意を表したい。

 さて、問題の出発点は、伊藤将憲氏が提起したように「オサマ・ビン・ラーディンは犯罪者か、英雄か」だったと思いますが、伊藤、河村両氏が「どちらかといえば、犯罪者だ」と主張するのに対して、吉田氏が「いや英雄の側面もある。少なくとも日本人は欧米人とは別のより中立的な見方をすべきだ」と反論しておられます。どちらの主張もそれぞれに傾聴に値する論点を含んでおり、私にとっては、それぞれに勉強になりました。3氏には、感謝申し上げたいと思います。

 さて、吉田氏は「河村洋氏の反論に反論する」で4点をあげて反論しておられます。第1点の「米国の対中東政策の不首尾は、米国の対中東政策のダブルスタンダード(欺瞞性)が原因だ」という主張と、第3点の「米政府は、最近になってイスラエルに対し入植地域からの撤退を要求しているが、これは世論工作に過ぎず、本気になって調停に取り組むとは考えられない」という指摘には、「なるほど、そうかもしれない」と説得されましたが、第2点の「河村氏の主権侵害正当化論を認めれば、米国は日本国内で自由に軍事行動をする権利があるということになる」という反論と、第4点の「日本の言論人は、米国の意図的な反諜報活動に意のままに操られないよう心がけることが肝心だ」という指摘には、首をひねりました。

 「主権侵害正当化論」についていえば、21世紀の今日では、もはや国家主権は絶対的な存在ではありません。主権には権利と同時に責任も伴います。国家にはその領域内の国民を「保護する責任(responsibility to protect)」があり、その責任を果たせない時には、国際社会は人道的観点から介入できるとされています。まして、自国がテロリストの隠れ家に使われているのに、それを取り締まる責任を果たせない場合、国際社会が介入するのは当然のことでしょう。それを「主権侵害だ」といっても、通用しません。

 最後に、吉田氏が自分に同意しない言論人を一括りにして「米国の意図的な反諜報活動に意のままに操られている」みたいな言説を残したのは、残念だと言わざるを得ません。この発言は、別に河村氏を指して「パブロフの犬のように条件反射している印象を受ける」と表現しているのと、呼応しており、自己の立場を絶対化するあまり、やや感情的になった発言との印象を与えます。少なくとも冷静さに欠けた発言であったと言わざるを得ません。

 
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