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2011-05-21 09:19

河村洋氏の反論に反論する

吉田 重信  china watcher 研究所主幹
 5月15日付けの河村洋氏の投稿「吉田重信氏の反論に反論する」に対し、再び反論します。

 第一に、米国の対中東政策の不首尾は、オバマ大統領だけの責任ではなく、関連した歴代のすべての米大統領の責任です。むしろオバマ大統領は過去の米国の対中東政策に縛られ、動きがとれない状態に陥っているところに彼の悲劇があります。米国の対中東政策のダブルスタンダード(欺瞞性)は、2つの面で顕著にみられます。1つは、河村氏が指摘している、中東でもっとも非民主主義的で、腐敗しているサウディ・アラビア政権を米国が擁護してきたことです。もう1つは、一方で核不拡散を唱えながら、他方でイスラエルの核開発を支援、容認してきたことです。また、米国は、対イラク政策の関連で、一時はサダム・フセインを支援するという誤りを犯しました。ビンラディがサウディ・アラビアの富裕階層出身でありながら、反米活動の首謀者となったのは、このような米国の欺瞞性に対するアラブ人の反発であると考えます。今回のビンラデン殺害によっても、第2のビンラディンが出現してくる可能性は高く、結果として反イスラエル勢力が拡大するという、米国にとっては皮肉な結果となりそうです。

 第二に、「米国は、自国の安全に支障があると考えれば、パキスタンの国家主権を侵害してもかまわない」という河村氏の主張は、国連加盟国である日本にとっても、恐るべき主張です。なぜなら、もし米国がそのような「主権侵害正当化論」を日本に対して当てはめれば、日本の政策が米国の国益に反すると考えたときには、米国は日本国内で自由に軍事行動をする権利があるということになるからです。そのくせ米国が北朝鮮の核開発に対しては決定的な軍事行動を行わないのは、米国の二重基準のせいです。北朝鮮に核を持たせて、中国をけん制する意図があるのかも知れません。

 第三に、これまでイスラエルのパレスチナ地域への入植を黙認してきた米政府は、最近になってイスラエルに対し入植地域からの撤退を要求していますが、これは、ビン・ラディン殺害後のアラブ側の反米感情を抑えるための世論工作に過ぎず、米国がイスラエルの意に反して、イスラエル・パレスチナ間の調停に本気になって取り組むとは考えられないのです。

 第四に、米国は、その反諜報活動(Counter-Intelligence Operation)を軍事行動の一環として位置づけていますが、米政府は、ビンラディン殺害後世界各地で米国に不利になる恐れのある情報や主張を抑える反諜報活動を展開しています。日本、とくに日本の言論人は、そのような米国の意図的な反諜報活動に意のままに操られないよう心がけることが肝心ではないでしょうか。
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