国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2011-04-25 18:04

(連載)脱原発の動きに与しないBRICS諸国(1)

酒井 信彦  日本ナショナリズム研究所長・元東京大学教授
 東日本大震災によって福島第一原子力発電所の事故が勃発したために、新聞には文字通り毎日々々、原子力発電にかんする記事が氾濫し、おかげで原発について勉強することができた。それによると、現在世界には、約440基の発電用原子炉が存在するらしい。国別に言うと、やはりアメリカが最大で104基、第2位が原発で電力の80パーセントを賄うフランスの58基、第3位が日本の54基、第4位がロシアの32基といったところである。

 そのほかでは、韓国21基、インド20基、イギリス19基、ドイツ17基、中国13基などの数字がめぼしい所である。インドは意外に原子炉の数は多いが、発電量から見ると効率が悪い原子炉であるらしい。つまりインドは20基で478万キロワットなのだが、中国は13基で1100万キロワットである。フランスを除いて、スリーマイル島やチェルノブイリの事故で原発に消極的になっていた欧米諸国、すなわちアメリカ、イギリス、ドイツなどは、地球温暖化問題をきっかけに積極策に転じようとしていたところを、福島原発の事故で出鼻を挫かれたかたちである。とくに革新政権の反原発路線を、保守党政権が修正したばかりのドイツでは、そのショックが大きかったらしく、25万人の原発反対デモが出現した。

 ところで福島原発の事故が生々しく進行中なのにも拘わらず、原発政策推進を高らかにうたい上げた国々がある。それが例の新興諸国、つまりBRICs諸国である。BRICsとはブラジル、インド、中国、ロシアの4カ国であったが、今回中国で開かれた会議から南アフリカが加わり、最後のSが大文字になり、BRICSとなった。4月14日に中国海南省の三亜で開催された会議の後、共同声明が出された。

 その「三亜宣言」の内容としては、リビア問題の平和的解決、国連安保理の改革、そして原発政策の推進などが盛り込まれているが、時局柄最も注目されるのが、原発問題であることは言うまでもない。しかし、朝日新聞は「三亜宣言」を独立の記事として取り上げず、リビア問題の長文の記事の末尾の所で、それに関連させて古谷浩一記者が附属的に述べるに止まっている。とくに原発問題については、「宣言はまた、福島第一原発事故で議論が高まる原子力発電について、『将来のBRICSのエネルギー構成の中で重要な位置を占め続ける』とし、先進国の一部に広がる脱原発の動きには、与しない姿勢を訴えた」と記すだけであるのが、極めて印象的であった。(つづく)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム