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2011-03-04 07:36

小沢の「地域政党あやかり」戦略は破綻必至

杉浦 正章  政治評論家
 「敵の敵は味方」というわけか、3月4日告示の名古屋市議選で民主党を惨敗させようと張り切る市長・河村たかしと、民主党元代表・小沢一郎が“呼吸”を合わせ始めた。3日も河村に近い小沢チルドレンが1人民主党を去った。小沢戦略は首相・菅直人の「倒閣」に向けて波状的な揺さぶりをかけ、総選挙では地域政党に活路を見出すところにある。一見地域政党ブームに素早く目をつけたように見えるが、その名の通り地域政党は“地域限定商品”であり、国政に風を吹かすような“うねり”に発展することはない。無節操な「あやかり戦略」には無理がある。既成政党離れが原動力となっている、地域政党ブームの象徴は名古屋にある。トリプル選挙で圧勝した勢いで河村は、市議選に大量の候補を立て、過半数を目指す。

 看板である「減税」の主張は、マニフェストを捨てて消費税増税路線に舵を切った菅政権を批判する、小沢戦略ともマッチする。小沢別動隊「16人組」の会派離脱、松木謙公の政務官辞任、佐藤夕子の離党も、すべてこの小沢・河村ラインにつながると解釈すべきだろう。13日投票の名古屋市議選は、「減税日本」が河村の意図通りに過半数をとれるかどうかは別として、バブル的な躍進はあり得る。民主党は解散前27の議席を半減させるほどの惨敗になることが予想される。これが息も絶え絶えの菅政権に追い打ちをかけることは必定で、統一地方選に向けて「菅では選挙を戦えない」というムードを強めよう。軽い乗りの民放テレビが「減税日本」をはやし立て、国政への影響を作り出す可能性はある。結果が判明する14日から政権を直撃するだろう。

 しかし、小沢戦略には致命的な欠陥がある。「減税」では国を動かすような潮流には発展しそうもないからだ。マスコミの主流である新聞の論調はすべて「消費税導入による財政再建」で固まっており、いまは批判しないものの、やがては「減税日本」の主張と激突するからだ。河村程度の行政改革は既にどこの自治体でも実施しており、河村のようにやかましく喧伝(けんでん)しないだけなのだ。だいたい名古屋の財政は1兆8000億円もの市債残高を抱えており、「減税」などと、はしゃげる状態にはない。看板の市議報酬半減の公約についても、予算捻出はたかだか6億円にすぎない。河村は民主党マニフェスト同様に、羊頭狗肉を掲げているのである。国政レベルになれば、政策論議のレベルも“民度”も上がるだろう。加えて、政界では“嫌われ者度”を競う小沢と河村が手を組む印象は、むしろ滑稽ですらある。したがって、「減税日本」が小沢の期待する全国規模の広がりへと発展するとは思えない。

 それでは他の地域政党は小沢と組むだろうか。「大阪維新の会」の大阪府知事・橋下徹は府議選、市議選への影響から小沢とは一線を画している。だいいち岩手で「反民主」を掲げる県議らが立ち上げた「地域政党いわて」は、小沢王国に風穴を開けるのが狙いだ。京都市の「京都党」も小沢的体質とは相容れない結党理念を掲げている。このように地域政党は東京発の政党の“体たらく”に嫌気が差して結成される傾向が強く、小沢がいくら食指を伸ばしても、結果は「名古屋だけだぎゃぁ」ということになりかねない。
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