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2011-02-21 00:00

(連載)マイケル・グリーン氏との対話(3)

河村 洋  NGOニュー・グローバル・アメリカ代表
 イラク戦争に反対した国々が善良な平和愛好国ではなかったことを忘れてはならない。中国とロシアは自国領内にイスラム分離主義運動を抱えている。ウイグルとチェチェンの独立運動を勇気づけかねないイスラム民主主義の台頭は、明らかに両国にとって受け容れられるものではない。また。フランスもサダム体制と商業関係をもっていた。イラン・イラク戦争の最中にイスラエルがイラクにあったフランス製の原子炉を爆撃している。サダムが抱いていた核保有の野望を考慮すれば、ゴーリスト外交政策はとても言い訳として受け容れられない。

 民主化促進と核不拡散の両面から見て、アメリカがイラクに関して謝罪姿勢をとる必要はない。スマート・パワーをスマートに活用して、我々の自由主義世界秩序の維持と拡大をはかるためには、これは非常に重要である。日本はオバマ氏の就任初期にこのことを言うべきであった。ところが、鳩山由紀夫前首相は普天間問題をめぐって対米関係を悪化させてしまい、中国が尖閣沖で日本の哨戒艇を攻撃するという事態を招いてしまった。日米関係の緊張により中国の拡張主義を許してしまった事態は、日本の民主党政権に責任があることは間違いない。

 しかし、共和党政権の外交政策からの「チェンジ」を印象付けることばかり気をとられて、謝罪姿勢をとってきたオバマ大統領にも責任の一端はある。きわめて皮肉なことに、鳩山氏の言動によって彼が望んでやまなかった「対等な日米関係」からほど遠いものになってしまった。鳩山氏が本当にそれを望んでいたなら、オバマ大統領には「イラク戦争によって中東の民主化の議論が活性化したのだから、謝罪姿勢をとるな」と言うべきであった。これこそ、スマート・パワーのスマートな活用である。

 鳩山由紀夫氏が対等な日米関係を口にした時、アメリカの政策形成者達の間ではリベラル派から保守派にいたるまで、軽蔑と嫌悪の感情が巻き起こった。しかしイギリスのウィリアム・ヘイグ外相が就任演説で対等な英米関係を主張した際には、アメリカでは敬意を払われた。このことは忘れてはならない!日英のダブルH(鳩山とヘイグ)がこれほどまで違うのは、なぜだろうか?中東の民主化と日米関係からは、スマート・パワーのスマートな利用に関して多くの教訓が得られる。最後に、会議終了後のあわただしい中で質問に応じて頂いたマイケル・グリーン氏の厚意に謝意を表したい。(おわり)
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