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2011-02-19 15:55

(連載)マイケル・グリーン氏との対話(1)

河村 洋  NGOニュー・グローバル・アメリカ代表
 去る2月14日に、グローバル・フォーラムと日本国際フォーラムが米戦略国際問題研究所(CSIS)と共催した「日米対話:スマート・パワー時代の日米関係」というイベントが開催され、私もそれに参加した。以下にその感想を若干述べてみたい。グローバルな問題が互いに複雑に絡み合ってくるにしたがって、ハード・パワーとソフト・パワーの組み合わせを上手く行なうことの重要性が増している。しかし、現在の東アジアは、中国と北朝鮮が西側主導の自由主義秩序に挑戦状を突きつけるホッブス的な世界である。また、ロシアもこの地域でのパワー・ゲームに再び加わってきている。そのような世界では、ハード・パワーが重要な役割を果たす。よって、スマート・パワーの基本概念を理解すると共に、それをどのようにしてスマートに活用するかを模索する必要がある。

 イベントの冒頭で、CSISのマイケル・グリーン日本部長が「スマート・パワーとはイラク戦争に対する反応として提唱されたものである」と、その基本概念を述べた。これを聞いた時に、私は、それがアメリカ外交への謝罪姿勢丸出しの言葉のように思えた。就任初期のオバマ米大統領は、プラハとカイロで悔恨と懺悔の演説を行なった。さらにAPECのシンガポール首脳会議でも、中国の「平和的台頭」を歓迎するとまで述べた。スマート・パワーという概念が従来のアメリカ外交への謝罪として出てきたものなら、これは由々しきことである。

 イラク戦争によって反米感情が吹き荒れたかも知れないが、サダム・フセイン打倒が、イランのグリーン運動、チュニジアとエジプトのフェースブック革命など、中東全域での市民の自発的な民主化運動の契機となったという重要な事実を見逃してはならない。さらに東へ進んでウイグルなど中央アジアにも影響が拡大する可能性もある。変化の風はイスラム圏を超えて、チベットや中国本土にも拡大するかも知れない。

 私は「スマート・パワーという概念は、イラク戦争への謝罪として出てきたものなのか」という疑問を抱いたが、該当セッションでは質問の機会がなかった。幸運にもイベント終了後、グリーン氏が通りかかったので、この疑問点を問いかけることができた。私がこの質問をした理由は、「就任初期のオバマ大統領はチェンジにとらわれる余り、グラッドストーン的な小米国主義の外交政策をとっているかのように見えた。ボブ・ウッドワード氏は、オバマ大統領について、アフガニスタンから心理的に撤退しているとまで述べた。スマート・パワーが、自由主義世界秩序という国際公共財の維持に積極的に関与しないという意味を巧妙に語る単語なら、非常に憂慮すべきことである。また、先に述べたように、サダム・フセイン打倒によって世界規模で中東の民主化に関する議論が活発になったのではないか」と思ったからである。(つづく)
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