国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2011-02-16 07:22

鳩山は「国辱の人」をいつまで演ずるのか

杉浦 正章  政治評論家
 沖縄県民は「抑止力」を方言で「嘘」を意味する「ユクシ」力と揶揄(やゆ)してきたという。前首相・鳩山由紀夫の発言など元々信じてもいなかったのだろう。しかし地元紙のインタビューで面と向かって「嘘だ」と認めて、舌を出されれば、激怒して当然だろう。琉球新報は「万死に値する大罪だ」と究極の表現を使って憤りをぶちまけている。遙か彼方にあった辺野古移転の実現が、鳩山「方便発言」の誘発した「沖縄の怒り」で、もう見えないほどに遠ざかった。いまや日米同盟の原点となった辺野古移転の日米合意すら、危ういものになりつつある。

 「お気軽に方便などと罰当たり」と今朝の朝日川柳にあるが、広辞苑によると「方便」とは仏教用語で衆生(しゅじょう)を教え導く、巧みな手段。真理に誘い入れるために仮に設けた教えであるという。鳩山の場合は、俗にいう「嘘も方便」で使ったので、「罰当たり」ということになる。この「嘘も方便」には、単に鳩山一個人の人格上の欠陥にとどまらず、民主党政権の本質があると言わざるを得まい。いい加減な政策と嘘のつき放題で長い野党暮らしをしてきた性癖が、政権という国家にとって最も信用性が重視されるポジションに到達しても、抜けきれないのである。発言は政権の抱える構造的な欠陥をまたも露呈したものに他ならない。

 民主党は、根拠のないマニフェストを5回にわたる国政選挙で唱え続け、自民党の敵失も利用して、ついに国民に信じさせてしまって、成り立った政権なのだ。首相・菅直人はその危険度にようやく気付いたようだが、時既に遅し。支持率は急降下して、取り返しが付かないところに到達した。防衛相・北沢俊美が「また数日たったら、違う見解が出るかもしれないので、あわててコメントするのは差し控えたい」と鳩山を侮蔑する発言をしているが、この対応もどうかと思う。気楽な一代議士の発言ならともかくとして、仮にも首相経験者であり、日米合意の当事者であったことが問題なのであり、担当相としてはしっかりコメントすべきであった。

 琉球新報が「明らかに首相になってはいけない人が、この国を担う。民主党政権の限界も露呈している」と断じているが、その通りだ。「学べば学ぶほど海兵隊は抑止力を維持していることが分かった」と述べておきながら「あれは方便」では、言論を命とすべき政治家業は成り立つまい。「トラストミー鳩山」の舌禍はもう「どうかしている」の段階を通り越し、国の政治に「害毒」を流し始めた。ついに政府が2月15日の閣議で、前首相の発言の訂正を決めるという事態にまで至ったのだ。北方領土問題で歯舞、色丹の2島を返還対象の軸とする見解を示したことについて、「政府の考えとは、必ずしも一致していない」とする答弁書を決定したのだ。

 自民党は衆院予算委員会への鳩山の参考人招致を要求したが、鳩山はまだ“生き恥”を曝し続けるのだろうか。みんなの党幹事長・江田憲司は「言語道断の発言で、即刻議員辞職をしていただきたい。こういう方を一国の首相に担いでいた民主党のクレディビリティ(信頼性)も根源から問われる」と述べているのが正解だ。鳩山はこれ以上国民への背信行為を重ねることをやめ、かって自らが主張していたように、首相経験者たるもの未練がましく政治の場に躍り出るのをやめるべきだ。いまはもう「国辱の人」でしかあり得ないことを悟るべきだ。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム