国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2010-12-19 14:08

(連載)「NATOと日本の同盟」とは?(2)

小山 清二  公務員
 NATO側からの提案による「NATOと日本の同盟」とは、単なる友好関係、仲良しクラブではない。NATOは、明らかに軍事同盟であり、恐らくイラン、パキスタン、アフガニスタンを睨んで、大陸と海洋から挟撃する地政学的見地からの同盟申込みと言えるだろう。既に、イラン近海に、米海軍と共に、NATO軍の艦船も集結しているという。しかし、イラン、パキスタン、アフガニスタンの背後には上海協力機構の中国、ロシアがいることを忘れてはならない。

 シンポジウムの欧州側参加者は「この『NATOと日本の同盟』は中国やロシアなどを仮想敵国として想定したものではない」と強調したものの、私にはそれが最後には中国やロシアと対峙することになる軍事同盟的役割を担っていると推察された。しかしながら、目下のドイツの最大の貿易相手国は中国であり、欧州経済はロシアからの天然ガスや原油を輸入して成り立っている。そんな中で、NATOがロシアや中国と軍事的に対峙していけるのかどうかは、はなはだ疑問である。とすれば、巧妙な誘いに乗って、気づいたら、独ソ不可侵条約のようなことにならないか。即ち、ロシアがNATOに加盟し、欧州が中国と軍事的にも連携するようなことになれば、「NATOと日本の同盟」は一挙に空中分解し、ロシア、中国の矛先は、かつてのソ連と同様に、日本に向けられてくるのではないか。

 この「NATOと日本の同盟」の狙いは、むしろ背後で戦争経済への移行を意図する米国が仕掛けているのではないか。世界的大戦争への協力体制を構築しようとする米国の世界戦略があるのではないか。既に世界は、国家財政の破綻、経済の悪化、ドル崩壊の危機、失業者の増加、異常気象による農産物の不作などで破綻寸前にあり、戦争経済、経済の軍事化に移行して行かざるを得ない状況ではないのか。

 今回の「NATOと日本の同盟」という提案から洞察すると、世界大戦への対立図式は「欧米対中ロ」となるのであろうか。その中で日本を欧米陣営に取り込むことを意図した提案ではないのだろうか。単なる杞憂であって欲しいと思うが、来年から具体的兆候が現れてくるのではなかろうか。(おわり)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム