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2010-12-06 07:53

社民党との“復縁”は砂上の楼閣

杉浦 正章  政治評論家
 まるで歌謡曲「別れても好きな人」なのだろうか。首相・菅直人は、前首相・鳩山由紀夫が罷免した社民党党首・福島瑞穂に“復縁”を迫るかのようだ。ひたすらに来年の通常国会乗り切りのための便法としようとしている。“入閣で連立”と言うことは困難だろうが、“政策でのパーシャル連合”的な連携を目指すものとみられる。しかし、罷免の経緯が普天間移転であったように、政権と社民党との間には高いハードルがあり、砂上に築く楼閣のように危ういものとなろう。与野党関係の俯瞰図を描くと、反政権で突っ走る自民党に、公明党も菅政権を「沈む泥舟」とみて、やや距離を置きながらも同調している形だ。菅はこの情況を解きほぐすのは容易ではないと見て、通常国会で予算関連法案を成立させるのに必要な衆院3分の2を、民主、国民新両党と、与党系無所属に、社民党を加えて確保する方向にかじを切りつつある。

 先の参院選で敗北したのを契機に、社民党内における福島のリーダーシップには陰りが見られるようになった。民主党にとっては、連携に消極的な福島の力が下がり、比較的柔軟な幹事長・重野安正の存在が相対的に上がったことが、政権との連携への動きを進める端緒となっているのだろう。これをとらえて民主党の幹事長・岡田克也は、12月1日に重野と会談、6日の菅と福島の党首会談の下工作をした。罷免されて以来拗ねているのは福島だ。福島は、防衛大綱で武器輸出3原則を見直す動きがあることに対して「2011年度予算案への反対も辞さない」との考えを表明、5日には、「首相に見直しは駄目だと、がつんと言う」と、改めて反対の立場を表明した。4日のテレビ番組でも 「連立復帰という話はまったくない。名護市に移設の日米共同声明を見直さなければならない」と突っぱねている。しかし政権側も福島を懐柔させるために、あの手この手を打ち出した。

 まず「当面は大綱に3原則見直しを明記せず」と先延ばしする方向での調整を検討し始めた。ついで、菅は国民新党代表・亀井静香との会談で「予算編成も3党で協力してやりたい」と民主党との政策連合を表明した。こうした下地作りの上に党首会談をしようとしているわけだ。菅がいかにして福島を取り込もうとするのかが見ものとなる。おそらく菅はアキレスけんである普天間移設問題は棚上げの形で深くは触れず、福島に社民党の予算編成への“参画”という“ごちそう”を並べるのではないか。幹事長代理・枝野幸男が4日、「社民党の意見を予算、税制を含めて内政面でしっかり反映し、緊密な連携を高めていくことが大事だ」と発言したのは、その布石に違いない。また福島の3原則緩和への懸念を何らかの形で払拭せざるを得ないのではないか。それがなければ会談の意味がないのだ。

 1回の会談で福島が懐柔されるかどうかは微妙だが、社民党にしてみれば出番が全くない情況で、与野党激突の中に埋没するより、3原則で主張を取り入れさせ、社会福祉、少子化対策などで意見を予算に反映させられれば、悪い話ではあるまい。「出番なし」の情況から「出番あり」へと脱することが出来るのだ。しかし、菅政権が続いた場合には、来年5月ごろの日米首脳会談までには普天間問題に方向を示さねばならず、3月にその方向を出せば、福島が政策連合を離脱する恐れは十分ある。予算関連法案成立のための3分の2が足りなくなる可能性を秘めているのだ。菅は4、5両日に予定していた沖縄訪問を急きょ取りやめたが、これは福島との会談への影響を考慮したために違いあるまい。これを“当面糊塗”という。たとえ協力関係が構築できても、極めて不安定なものとなることを象徴している。
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