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2010-12-03 04:21

影響多大なウキリークスの情報暴露活動

島 M. ゆうこ  エッセイスト
 米国政府の25万件以上の機密書類が、何者かの手によって国際非営利メディア組織ウキリークスに提供され、11月28日に一般の報道組織向けに出版された事件を受けて、連邦政府は「ナショナル・セキュリティを脅かす重大な事件」と受けとめている。また、ウキリークスの創始者、ジュリアン・アサンジをスパイ法を含めた刑法違反により、起訴できるかどうか調査中である。ウキリークスの情報筋によると、機密書類は1996年12月28日から、2010年2月28日までに発信された274の大使館、領事館等からの外交公電であるらしい。この機密書類には、米政府役人と世界中のリーダー、外交官、及び政治家との内密の個人会話も含まれており、米政府及び他国の政府を辱める結果になっている。この膨大な秘密情報をウキリークスに提供した人物、又はグループの身元は断定されていない。また、漏れた情報が全て真実であるかどうかも判明していない。

 ウキリークスは、アフガニスタンでの戦争に関する機密情報を今年7月、英紙『ガーディアン』や米紙『ニューヨーク・タイムス』などに9万点以上も提供している。また、10月22日には、アメリカ歴史上最大の軍事機密が漏れている。暴露された内容は、イラク戦争に関して、2004年1月から2009年12月までに記録された39万件以上のペンタゴン機密報告書であり、『The Iraq War Logs』と呼ばれている。イラク及びアフガニスタン戦争に関するこの膨大な機密情報の漏れによって、民間人の正確な死亡数などについて、政府が国民に事前に知らせず、秘密にしていたことが判明した。同じく22日の『ガーディアン』紙は「組織的で刑罰を受けない、イラク警察当局や軍人による、虐待、拷問、レイプ及び殺人など、かなりの頻度による報告に対して、米政府が調査しなかった」と記述している。

 ウキリークスは2007年にウエッブ・サイトに登場して以来、匿名の情報筋から秘密情報を入手し、世間が知らないことを暴露し続け、アムネスティ・インターナショナルを含め、2~3のメディア組織からメディア賞を受けている。人権問題と戦うアムネスティ・インターナショナルは、最近、G. W.ブッシュ政権下で「尋問捜査技術」を強化したブッシュと政府役人に対して、迅速な犯罪捜査を実施するよう要請している。ブッシュは、元大統領として、また個人としての人生の回顧録を書籍にまとめ、11月9日に出版した。この回顧録の中で、更に『NBC』ニュースとのインタービューで、本人は、イラク及びアフガニスタン戦争中拘束された主な抑留者に対して、水責めの拷問を許可したことを告白している。12月1日のアムネスティ・インターナショナルのニュースは、「2009年12月、南イエメンで米軍がミサイルを発射し、多数の住民が殺されたとする、ウキリークスが漏らした情報は、今年早い時期にアムネスティが提供した画像によって確証された」と報じている。

 このアムネスティ・インターナショナルのニュースは、更に「ウキリークスからの秘密情報によれば、イエメンの大統領アリ・アブドラ・サーレハは米国陸軍大将デヴィッド・ペトレイアスに対して、イエメン政府は『爆弾が我々のもので、貴方(米国)のものではない、と言い続ける』ことを保証したとされている」と伝えている。しかし、事実は全く逆で、このウキリークスの暴露によれば「『ミサイル攻撃はアメリカ軍が行ったものであり、イエメン政府軍ではない』とのアムネスティ・インターナショナルが掴んだ事実を更に確証した結果になった」と報じている。賞賛と批判の双方の対象になっているウキリークスであるが、その影響力は多大である。暴露された情報がすべて真実であるなら、近年の米政府には、建国当時の理想も、政治原理も、微塵も残っていない事を、改めて米国民に認識させた事になる。一方、多数の情報筋によると、「アメリカと同盟国との外交関係にダメージを与える」ことや、秘密情報がネット上に拡大して、悪用され、「人命が危険に晒される」ことなどに鑑み、ウキリークスの行為は「アメリカの安全保障を脅かす」という点において、米政府はかなり悲観的になっているようだ。
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