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2010-11-09 15:17

(連載)分裂する米議会は、政治の成果を出せるか (1)

島 M. ゆうこ  エッセイスト
 1970年代以降、共和党と民主党の間には極端なイデオロギーの違いによる分裂傾向がある。また、ブルー・ドッグのように財政問題に関しては、共和党寄りの民主党員が存在し、加えて党内派閥があるため、一致団結が困難な体制になっている。今回の中間選挙では、このような政治体質の変革を期待した多くの有権者が、左派、右派、保守、リベラルといったイデオロギーを超えて、雇用改善や経済回復を願って投票したようだ。一般投稿者が今回共和党に投票した共通の理由としては、多種のメディアに寄せられた声を見るかぎり、「政府内の権力のバランスが必要だと思ったから」、「共和党と民主党がお互いに妥協点を見出し、現在抱えている問題を解決してほしいから」などがある。

 このような有権者の期待とは裏腹に、共和党の一部の指導者は、すでに米国議会の分裂状態を維持する構えであると、各種のメディアが報じている。ケンタッキー出身の共和党リーダーで上院少数党院内総務のミッチ・マッカーノは、「共和党の今後2年間の最優先目標は、オバマ大統領を再選させないことにある」と大胆な発言をした。また、かれは「それ以外に拒否権を発動する人間を葬る方法はない」という意味の補足発言をし、オバマ氏と民主党に全面的妥協の必要性があることを警告した。一方、オバマ大統領は11月3日の記者会見で、「民主党敗北の結果は大統領である私の責任」であると述べ、今後は共和党と妥協点を見出しながら、ひとつひとつ問題解決にむけて努力していく旨の声明をおこなった。

 マッカーノの発言をメディアでキャッチした有権者の中には、「共和党に投票したのは、今後2年間の最優先目的を、オバマを2012年に再選させない努力のみに終わらせるためではない」、「我々が今ほしいのは、ジョッブ(仕事)だ」などの怒りと失望の声が挙がっている。米国民は、党派より、結果を重視している。米国民が望んでいるように、両党は妥協点を見出しながら、現在抱えている難問を解決していくことができるのだろうか?

 有権者が経済面の改善の必要性を強調しているように、オバマ大統領は財政問題に力を入れたいようであるが、特に減税や政府の出費削減問題に関しては、両党間に決定的な違いがある。G.W.ブッシュ政権下で2001年及び2003年に制定された減税法は今年12月末で有効期限が切れる。11月6日付けの『ワシントン・ポスト』紙によると、この減税法の更新問題に関しても、既に民主党と共和党は妥協できない点があるようだ。共和党は、ブッシュ前大統領の減税システムを永久的なものにしたい方針だ。一方、オバマ大統領は「年間所得が個人で20万ドル以下、または夫婦で25万ドル以下の場合は、引き続きブッシュ政権下で成立した減税システムを適用するが、それ以上の高額所得者に対しては、永久減税すべきではない」との考えを示している。(つづく)
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