国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2010-10-11 01:32

仙石官房長官は、尖閣問題に歴史認識問題を持ちこむな

高峰 康修  岡崎研究所特別研究員
 日韓併合100年の菅首相の謝罪談話発出の先頭に立ち、その過程で日韓間の賠償問題が済んでいないと示唆したことに如実に表れているように、仙石官房長官の歴史認識は余りにも歪んでいるとしか言いようがない。10月2日に枝野幹事長代理が、講演の中で「中国は悪しき隣人である」と言い、日中の「戦略的互恵関係」というスローガンに関しても「美辞麗句だ」と断じた。日中関係の悪化を恐れるあまり、閣僚らから枝野氏の不規則発言への反動として、媚中的発言が出て来はしないかというのが、私が密かに抱いていた懸念の一つであった。

 前原外相と岡田前外相は「日中の戦略的互恵関係という考えは間違っていない」と反論したが、この程度ならば許容範囲内であろう。しかし、仙石官房長官の10月4日午前の記者会見での発言は、「大暴走」と呼ぶにふさわしい。すなわち、「日本が侵略及び侵略的行為によって中国に被害をもたらしていることも間違いない」「日中は、少なくとも2000年に及ぶ付き合いだ。歴史の俎上に載せれば、そんなに中国のことを言うべき話ではない」と述べたのである。仙石氏の意図は、尖閣沖衝突事件で悪化した日中関係の修復に努めるということなのだろうが、尖閣沖衝突事件とは全く無関係な歴史認識問題を持ちこんだことは、利敵行為以外の何物でもない。尖閣沖衝突事件で、わざわざ中国に歴史認識カードを与えて、余計なファクターを増やして、自国の立場を不利にするなど、外交上の損失は計り知れない。

 日本が中国において侵略的行為を行なったという歴史認識を持つことはご自由である。しかし、それを表明することは、「村山談話」やそれを継承するいくつかの首相談話に一見整合的に思われるかもしれないが、個別具体的な国名を挙げることは、これらの政府見解の趣旨を逸脱している。まして、日本が中国を侵略して被害を与えたという歴史観をいつでもどこでも表明してよいかと言えば、そんなことは断じてない。尖閣問題のように極めてデリケートな話をしている時に、それに絡めるかのような形で過去の日本の中国に対する行為を云々することは、閣僚の発言としては絶対に容認できない。仙石氏は「日本は中国を過去に侵略したのだから、尖閣問題で償うべきだ」と言っているに等しい。直接そう言っていなくても、このタイミングで「日本が侵略及び侵略的行為によって中国に被害をもたらしていることも間違いない」などと発言すれば結果として、そういうことになる。

 仙石氏は、先月末にも尖閣沖での衝突事件を受けて漁業関係者の間で不安が高まっているという指摘に対して、風評で盛り上げるべきではないと、極めて不適切なことを言っている。仙石氏の言動は、親中的であるといった限度を超えて、もはや中国の代弁者であると非難されても仕方ないレベルに達している。仙石氏には、一刻も早く国政の中枢からお引き取り願う必要がある。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム