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2010-10-08 12:41

(連載)グローバル時代のテロリズムを考える(3)

島 M. ゆうこ  エッセイスト
 また、テロリズムの原因についても、多くの学者は、グローバル時代の政治、経済、イデオロギー及び文化などを多面的に分析し、「これらが複合的に絡み合った結果生じた副産物である」と指摘している。中でも、政治的観点からの見解は興味深い。2002年から03年にかけてMITプレスの『国際安全保障』誌に寄稿された論文「グローバリゼーションと国際テロリズム」は、グローバル化により各国の権威が希薄化した点やグローバリズムを先導したアメリカの外交政策に問題がある点などを指摘している。ある学者は、「国際的安全性、特に世界におけるアメリカのリーダシップを脅かすテロリズムは、弱者が強者に対して、政治的権力を失った者が得た者に対して、また革命を望むものが現状維持を望む者に対して向けられるテロリズムであり、それは長期に及ぶ」と述べている。

 アルカイダ組織のテロリズムについて、「イスラム教の最も神聖な地にアメリカの武装兵が駐在していること自体が、オサマ・ビン・ラディンの大きな反感の原因のひとつである」として、アメリカの資源政策が直接的な原因である、と指摘する専門家もいる。アメリカ軍の駐在について反感を抱いているのは、アルカイダ組織だけではない。事実9月30日付けの『CNN』紙の記事によると、ワシントンDCを基点とするシンクタンク・グループ「ニュー・アメリカ・ファウンディション」が直接インタービュー形式で世論調査を行ったところ、アフガニスタン内部の原住民地域の住人の60%は「アメリカ武装兵に対する自爆テロは正当化できる」と信じており、住人の90%がかれ等の地域でのアメリカの軍事活動に「反対する」と述べている由である。

 2009年に起きたマンハッタンの地下鉄での爆撃や、クリスマスの日に起きたノースウェスト航空の飛行機爆破未遂事件の後、同年12月28日付けの『ニューヨーク タイムス』紙は、「イエメンのアルカイダ・グループのリーダーは、イスラム教徒に対する戦争に参加した西洋諸国軍は十字軍と同じだとして、イスラム諸国と戦う西洋諸国の空港、機内、地下鉄、更には住宅地までを含む箇所に小さな爆弾を使うよう指示した」と報じた。1998年2月、ラディンは「アメリカの民間人及び軍事上の同盟国の国民を殺すことは、彼らがどこにいようと、全てのイスラム教徒の宗教的義務である」と臆しなく宣告している。

 2006年出版の著作『American on Notice』のなかで、著者のグレン・シュワィツァーとキャロォ・シュワィツァーは「アメリカは常にアメリカの保安とアメリカの富を要求するが、国際社会全体の安全と豊かさには本質的な関心を持っていない」と述べ、それが反米感情の政治的原因の一端だと指摘している。さらに、両著者は「世界は、地球温暖化、生態系の保存、炭鉱採掘の禁止、国際司法裁判所の設立などに関する国際協定への参加をアメリカが拒否したのを目撃している」とも述べており、アメリカに何らかの責任があることを示唆している。「これらの国際協定に賛同できない理由がアメリカにあったとしても、アメリカの外交政策や資源政策は多くの国にとって、特に中東諸国にとって、脅威に写っている」とも述べており、これに賛同する知識人も少なくない。(おわり)
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