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2010-10-05 13:51

(連載)米国、包括的対イラン経済制裁へ(3)

石川 純一  フリージャーナリスト
 こういった構図は、突き詰めれば、何もイスラム社会だけではなく、いわゆる「南」の国に共通したものだ。近代に追い付く統一国家を形成するために、民族を持ち出したり、宗教を持ち出したり、はては共産主義を持ち出したりする。西欧列強が植民地主義にのっとり世界に覇を唱えた時代、それに対抗するため、まず民族独立がスローガンとして掲げられた。だが、同じ民族の中でも、植民地勢力と手を結び、甘い汁を吸おうとする連中、要するに要領のいい手合い、守旧派が必ずいる。

 この守旧派を打倒しない限り、民族独立は果たせないと考えたとき、共産主義の浸透する間隙が生じた。だが、共産主義は新たな共産官僚を生み出しただけに終わり、そのことに民衆が気付いた時点で必然的に終焉を迎えた。では、いかにして「南」は己のアイデンティティを確立するのか。宗教によってである。キリスト教、イスラム教、ユダヤ教、いや仏教ですら原理主義が台頭する下地がここに出来上がる。

 これまでは、東西冷戦という煙幕によって、宗教をはじめとするあらゆる難問解決が先送りされてきた。が、人類は今、いよいよこの難問解決に本格的に取り組まなければならない事態に直面しつつある。国境線を越えて深まりゆく混沌の中で、既にイデオロギーは終焉を迎えた。唯一残された「ボーダーレス」「インターナショナル」なものは、宗教以外にない。だが、宗教に果たしてその能力があるのか。仮にあったとしても、どのような方法で人類を導いていこうとするのか。その答えは文字通り曖昧模糊として分からない。

 原理主義にしても、開祖の時代である「近代」以前ならいざ知らず、今は世界的流通網の確立を背景にした大量消費社会であり、インターネットの普及に象徴されるごとく、情報が瞬く間にして全世界を駆け巡る時代だ。お隣の芝生は必ず、瞬時にして見えるのである。羨望、嫉妬、憎悪は時を経ずして拡大再生産される。が、「貧困」「経済」「紛争」「エイズ」「麻薬」「環境破壊」「人口爆発」─ーこういった今の人類の抱える諸問題に対しては、わが物顔でのし歩く宗教も答えを見いだせていない。畢竟、アメリカン・グローバリズムが世界標準として標榜される中で、それに対する「異議ありグループ」の代表者がイスラム原理主義であることだけは確かだ。21世紀はいまだ、「夜明け前」の暗い迷いの中にある。(おわり)
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