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2010-08-24 10:35

(連載)中国のアフリカ進出と戦略資源としての食糧(2)

高峰 康修  岡崎研究所特別研究員
 独裁政権が転覆することは結構なことだが、内戦や貧困によって、いわゆる「人間の安全保障」が脅かされることは、アフリカに「良い統治」を定着させ、アフリカの人々の人権を大事にしながら相互利益を図っていくという自由主義諸国の方針に真っ向から反することであり、看過できない。そればかりでなく、内戦や貧困が多発すれば、結局は、アフリカに進出して食糧の獲得を目指すという中国自身の戦略が成り立たないことになる。中国のやり方はいかにも強引で、拙劣である、と言わざるを得ない。

 しかしながら、中国の一連の動きには我が国の政策にも示唆するところがある。中国は、まずエネルギー資源を求めてアフリカに進出し、続いて食糧の安定確保という目的を加えた。この順位付けには注目したい。我が国では、食糧自給率の向上ばかりが叫ばれ、エネルギー安全保障はいささか閑却されがちである。また、食糧自給率の向上は目的ではない。目的はあくまでも安定的に食糧が供給されればよいのだから、「自給率至上主義」から脱却し、海外からの安定的供給こそ重視すべきである。

 中国は食糧の純輸入国だが、自給率向上ではなく、海外からの安定供給を目指すことにした。その発想は参考にすべきであろう。ただし、中国はそのやり方に問題が大いにある。自由主義国である我が国のとるべき王道は、しかるべき国(例えば豪州やカナダ)とFTAを結び、その中に「食糧安定供給協定」を盛り込むことであろう。

 ところで、我が国はアフリカ支援では最先発国の一つである。しかも、灌漑をはじめとする農業支援は日本の最も得意とするところである。長期的に見れば、先に述べたように、中国の帝国主義的なやり方ではアフリカの発展に繋がらない。我が国の地道な努力こそ、アフリカの農業を発展させ、食糧の安定的供給先たらしめる可能性がある。こうした取組みは、中国の攻勢にひるむことなく、是非とも続けるべきであろう。他の自由主義諸国とアフリカ支援において連携することも必要である。(おわり)
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