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2010-08-06 07:30

超党派路線へ“米倉調停”浮上

杉浦 正章  政治評論家
 民主党の日本経団連への大接近は、野党から「モラトリアム(一時停止)状態」と揶揄(やゆ)される菅政権にとって、近来にないビッグヒットだ。経団連会長・米倉弘昌と首相・菅直人は親しい関係にあり、重要課題で「菅・米倉・自民」の橋渡しが可能となった。今後消費税増税・法人税減税など税財政改革で超党派の合意が必要となる中で、“米倉調停”が機能しそうな状況だ。ここでも脱小沢が実現したが、党内には波紋が生じよう。

 経団連と民主党は、鳩山政権発足以来ぎくしゃくした状態が続いていた。とりわけ御手洗富士夫時代には、偽装請負問題で枝野幸男が先頭になって追及、参考人招致まで求め、最悪の状態であった。ところが、米倉と野党時代から定期会合を持つなど親しい関係にある菅が首相に就くと、関係は一変。米倉は政権成立早早の正副会長会議で菅政権支持を決定、米倉が記者会見で支持を表明している。期せずして会長交代と首相交代が相乗効果を生んだ形となった。

 経団連側には、国家財政が危機的状況にある中「衆参ねじれ国会で与野党対立が激化すれば、抜き差しならない状態に陥る」(米倉)との危機感がある。米倉は、「党派を超えて処理できるものは、処理する」という政治家の意識改革が不可欠と判断しているようだ。経団連は今後9月初旬までに自民党とも政策対話を開催する方針である。米倉は、消費税増税を含めた財政再建や自民党も主張している法人税率引き下げ問題で、太筆書きの合意を探ることになろう。また鳩山の思いつきで国際公約になってしまった温室効果ガスの25%削減問題などでも、調整を進めることになろう。8月5日の会合には、幹事長・枝野幸男や政調会長・玄葉光一郎が出席。経団連は消費税を含む税・財政・社会保障の一体改革を超党派で進めるよう要望。民主党側は今秋から検討する考えを示した。

 大接近が可能になった背景には、菅の現実路線で民主党の左傾化路線が修正されつつあることが大きい。労組、消費者重視の左翼主導型政治基調が崩れつつあり、企業側とも話の通ずる雰囲気が生じているのである。しかし菅の再選路線にプラスの効果をもたらすかどうかは微妙だ。というのも、党内左派重視の小沢が、経団連とは距離を置いており、既に民主党政策調査会では小沢グループから経団連との接近をけん制する発言が出されている。「財界寄りでは、自民党政権と変わらない」というのである。小沢グループは消費税増税反対を代表選のテーマに掲げる構えであり、執行部の経団連接近が路線上の対立を惹起(じゃっき)する可能性も否定できない。
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