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2010-07-26 07:27

長老笛吹けど、龍馬は現れず

杉浦 正章  政治評論家
 7月24日のBS朝日の番組は、久しぶりに元首相・森喜朗と元衆院副議長・渡部恒三が大連立の話で盛り上がり、面白かった。しかし、民主・自民両党の長老が「救国円卓会議」で意気投合となれば、書かざるをえないと思うが、大新聞はなぜか触れずに、朝日も、読売も、回顧談を記事にしている。両者ともかなり真剣で、太筆書きの切り口はちゃんと核心を突いていたにもかかわらずだ。

 内容を紹介すると、まず森が「国家国民第一で政治をやるのが政治家のつとめだ」と述べると、渡部が「是は是、非は非。増税だから何でも反対ではなく、国のために役立つことに賛成してくれるなら、これでいい」と応じた。ついで森が極秘の判が押された07年の大連立騒動の際の小沢一郎メモを取り出し、「来年度に結論を出すべきものとして、社会保障各党協議会の立ち上げ、国と地方の財政に関する協議会の立ち上げと書いてある。今度もこうしたことを、中堅が集まってやったらいい。大連立はその後だ」と述べるとともに、「しばらく政党の意識を抜いて、国家、国民のために話し合っていくことが、国会の責任だし、政治家の務めだ」と付け加えた。さらに森は具体的な提案として「救国円卓会議をつくろう」と持ちかけた。渡部は「賛成だやりましょう」と応じた。

 続けて森は「衆院の任期はあと3年ない。1年後でも、2年後でも集まってやろう」と持ちかけると、渡部は「賛成だ。国益優先。3年間党利党略なしだ」と答えた。両者とも、自民党で当選した同期だが、まさに肝胆相照らすムードが現出した。政治家だから冗談めかした部分もあったが、政局の認識、切り込みは正鵠を得ていた。つまり「真性ねじれ」の現状では、野党が「何でも反対」で国会に臨めば、安倍政権以来の不毛の国会が続く。これは何としてでも回避せねばならぬし、回避するには、まさに危機的状況にある財政再建で最低限の一致をして、そのための「円卓会議」で党代表が話し合う。消費税増税で一致に至れば、そのための大連立を組み、法案を通す。こうした切り口で、両党長老が一致したのだ。これは今後の政局を見る上で念頭に置いておいた方がよい。

 一方、同日のテレビ番組では、自民党総裁・谷垣禎一がやはり大連立に言及していた。谷垣は「すぐ大連立という発想は、前のめり過ぎる。頭には全くない」と否定するとともに、「立法府の構成勢力と行政府が食い違うのは、諸外国にも例が多い。まず、議論をする中で一定の結論を生んでいく努力をすべきだろう」と述べた。まさに「長老笛吹けど踊らず、坂本龍馬は現れず」という感じだ。どちらかと言えば谷垣は「真性ねじれ」を追い風に、政府・民主党を早期解散に追い込むことに照準を置いているのだろう。理想論と現実論のはざまで不幸になるのは、国民でしかない。国家・国民のための政治より、党利党略が優先して、国会が相変わらずの混乱となれば、やがては世界的な「日本売り」を招き、財政破たんへの坂道を転げ落ちることが明々白々である。そのことを与野党のリーダーは認識すべきではないのか。
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