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2010-06-01 09:50

(連載)普天間問題の残した課題(1)

湯下 博之  杏林大学客員教授
 半年以上にわたって日米関係をゆさぶり、近隣の友邦諸国に懸念を抱かせ、日本の政治を対外的に身動きのできないものにするとともに、国内で政治に対する信頼感を喪失させた普天間基地移設問題に、日米合意という一つの大きな動きが出た。

 沖縄県民の人達の反応は硬化していて、日米合意内容の実現は容易でないと言われ、普天間問題の「決着がついた」とは言い難いが、これ迄の驚くばかりの「迷走」状態から見れば、貴重な転機となり得ることは間違いないと思われる。今後、「迷走」とその結果生じたマイナス面についての政治責任をめぐり、種々の動きや議論が見られようが、日本国民の利益という観点からは、政治論争に明け暮れるのではなく、この時点で、普天間問題をめぐって起こったことを冷静に分析するとともに、むしろ今後どうすることが大切かを考えることが必要と思われる。

 というのは、普天間問題は、国民の圧倒的期待と支持を得て発足した鳩山政権が、政権担当の不慣れのためもあって、国際政治や安全保障についての基本的な知識や判断力を欠いていたため「迷走」してしまったと思われるからである。しかし、現政権が失敗したからといって、(参議院選挙を経て政界再編でも起こらない限り)今の日本には現政権にとって代わるに相応しい受け皿がない。

 もともと、55年体制の下で自民党の長期政権が続いた後に初めて実現した本格的政権交代であったので、好ましい形の政治の姿が生まれるまでには若干の時間が必要といわれていた。しばらくの間は、試行錯誤を含め、政治家と国民の双方が経験を積むことが必要というわけである。そう考えると、普天間問題は、日本の政治にとっての貴重なレッスンであり、同時にこのレッスンを通じて、幾つかの課題がはっきり浮かび上がってきたと思う。すごく高い授業料を払ったことになるが、このレッスンで学んだことを生かさないと、日本丸という船が泥船と化し、国民全員が乗ったまま沈んでいくのを防げないように思われる。(つづく)
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