国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2010-05-05 08:30

(連載) メキシコ湾原油流出事件の衝撃について思う(2)

島 M.ゆうこ  エッセイスト
 NAPCによると、1970年代にアメリカは、原油危機に取り組むため、アラスカにパイプラインを建設するなどの国産原油増産の計画を進め、各地で実験的な掘削を行った。また、ソーラー・エネルギーなどの原油に代わる再生エネルギー資源の研究・開発を進めるため、多額の政府資金を投入した。また、自動車の燃料の効率をあげるための基準も設定し、戦略的原油保留も行われた。この結果、1980年代には原油の生産が消費を上回る過剰状態になり、原油資源を保存する努力が緩慢になった。自動車燃料の効率を高めるための政府の基準も低下したため、再度、燃料効率の悪い大きな車が市場に出回るようになった。

 1980年代、効率的なエネルギー計画の実施に失敗したアメリカは、1990年代に再び輸入原油に依存する状況になった。このような状況が続くと、アメリカの市場に出回る原油は、2020年までには60%以上に達し、そのうちの約50%は中東からの輸入原油になるとの見方もある。今日、世界の産業エネルギー資源の85%は原油であり、2015年までには原油の需要は更に2倍に拡大すると予測されている。

 近年、ガソリンの値段が上昇している背景には、2004年にOPECのメンバー国であるサウジアラビアが、1日100万バレルの原油生産を削減すると発表したことも背景にあるようだ。原油資源は中東の主な国に集中しているため、今後も世界の原油供給は、アメリカの中東に対する外交政策如何によるものであり、OPECの決断は重大であるとする見方が多い。

 アメリカ生物科学研究所が2002年12月に発表した情報によると、「アメリカは2050年までに必要なエネルギーのほぼ50%を再生可能なエネルギー資源で補うことが可能である」との見方を示している。2050年までには建築技術が更に高度化し、建物の内部を流通する温熱や寒熱エネルギーを蓄えるシステムも更に進化する可能性がある点や、地理的な違いによる差はあるものの、アメリカではソーラー・エネルギー・システムが伸びる可能性があることを示唆している。今回起きた事故による環境破壊の深刻さを思うと、原油掘削に頼らない「環境にやさしい再生エネルギー」資源の研究開発が益々急務であると考える。(おわり)



-----------------------------------------------------------------------
政策掲示板URL
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム