国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2010-05-04 02:31

(連載) メキシコ湾原油流出事件の衝撃について思う(1) 

島 M. ゆうこ  エッセイスト
 4月20日、イギリスの国際石油会社・ブリティッシュ・ペトロリアム (BP)がメキシコ湾での海底原油掘削作業中、爆発事故を起こし、多くの被害者を出した事件は、環境及び生態系に深刻な影響を及ぼす問題として注目されている。隣接沿岸海域への莫大な原油漏れが懸念され、フロリダ州は既に緊急事態を宣言した。現在、清掃作業は困難を極め、毎日約80万リットルの原油が海底から流出しているため、全く進歩が見られていない。このため、アメリカ歴史上最大の環境災害になる恐れが懸念されている。

 事故の責任は、ヒューストンやテキサスに本拠がある世界最大の石油掘削機械販売会社・ハリバートン(Halliburton)社が、BPにリースした器材の一部に欠陥があったため、と報じるメディアもあるが、正確な原因はまだ不明であり、その解明が急務になってきている。このハリバートン社は、2001年2月、ハワイのオアフ島沖でアメリカの潜水艦グリーンビルに下方から衝突されて、沈没した実習船愛媛丸の難航を極めた回復作業に関与した会社である。しかし、2001年新しく発足したブッシュ政権下で副大統領だったデイック チェイニーは、この会社の株主であり、1995年から2000年までは最高経営責任者(CEO)であった。9.11後は、原油に関係が深いと言われるイラク戦争で影響力が強い人物だったことは知られている。
 
 今回の事件は、1989年3月、エクソン・バルディーズ(Exxon Valdez)がプリンス・ウィリアム湾で座礁し、積んでいた原油を流出した事件で、莫大な環境被害と経済的打撃を与えた事件を思い起こさせる。どうしてこのような大惨事が繰りかえされるのか、理解しがたい。しかし、環境への影響を無視できない原油の掘削問題は、アメリカのエネルギー政策、及び外交政策に大きな関わりがあることも、否定できない。アメリカは、原油に代わる「環境にやさしいエネルギー」の開発にもっと税金を有効活用すべきだ、という声は長年続いている。

 国立公文書出版社(NAPC)の資料によると、第二次世界大戦後、増え続ける人口及び急速な世界経済の成長により、原油が主な地球的規模でのエネルギー資源になっている。世界の人口の5%にあたるアメリカは、実に世界のエネルギーの25%を消費している。従って、アメリカのエネルギー政策が世界の経済及び環境問題に影響を大きな及ぼしているのは言うまでもない。アメリカのエネルギー資源は、原油約44%、天然ガス21%、石炭23%、原子力7%、水力発電4%の割合であり、最も依存しているのは原油である。車社会であるアメリカの運搬資源は、驚くことに70%から100%も原油に依存している。
(つづく)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム