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2010-04-13 07:38

野垂れ死に路線をひた走る鳩山

杉浦 正章  政治評論家
 一瞬何かのジョークかと思った。首相・鳩山由紀夫に「4年間は続けて欲しい」と言う菅直人の4月12日の発言である。そして気づいた。この状況では、次を狙わなければ出てこない言葉だと。鳩山内閣の支持率がついに2割台に突入した。2割台というと、直近3代の政権が辞任に追い込まれた数字だ。にもかかわらず、鳩山も、幹事長・小沢一郎も、民意の離反にほおかむりして、居座り路線を継続する。しかし、菅のような政治のプロなら、現状はまさに野垂れ死に路線を突っ走っているのが見えているはずだ。したがって、菅発言は下心がありありで、実にいやらしい発言に見えてくる。

 内閣支持率は、日本テレビ系のNNN調査では、28・6%、テレビ朝日系のANNでも28・5%で、ともに初めて3割を下回った。この流れはおいおい新聞社の調査でも生じて来るだろう。もう一つ重要なのはNHKの調査で、「夏の参議院選挙で、民主党が参議院で単独過半数を占めることは望ましいと思うか」に対して、「望ましい」「どちらかといえば望ましい」が33%、「どちらかといえば望ましくない」と「望ましくない」が54%となったことだ。この傾向は、実際の投票行動にも反映している。大きい自治体では長崎県、町田、鳥取両市の首長選で自民党が勝っているほか、読売新聞の調査では民主党は衆院選後の地方選挙で29勝37敗の成績である。自民党支持率に変化が少ないにもかかわらず、投票実態で勝ち続ける傾向が生じているのだ。実際の投票行動では、民主党離れした票が、自民党か、みんなの党に流れる傾向を示している。支持率と投票実態のかい離現象である。したがって与謝野馨の「支持率が自民党に戻らない」とする新党立ち上げの根拠は、成り立っていないことになる。

 この傾向が意味するものは、複数区2人擁立の小沢の選挙戦略が立ちゆかなくなりつつあることだ。小沢は12日「今まで新聞やテレビの世論調査は、あたったことがほとんどない」との暴言を吐いたが、小沢が強気に出るのは、追い詰められている証拠だ。小沢神話の破たんの兆候は、党内からも生じ始めており、岐阜県連が12日、党執行部刷新を求める緊急要望書を鳩山代表宛に提出している。表面上は「県連の総意ではない」と取り繕っているが、選挙で追い込まれている地方の実態を反映したものだ。「生方の乱」「連合静岡の乱」に次ぐ、まぎれもない反小沢の動きだ。「政治とカネ」で重要なポイントは「陸山会」の土地購入をめぐる政治資金規正法違反事件で、東京地検特捜部が小沢氏を不起訴処分としたことの是非を検討している東京第5検察審査会が、月内にも議決する公算が大きくなっていることだ。起訴相当の議決をすれば、政局を直撃する。

 一方鳩山の「普天間腹案」なるものも、「出口なき迷路」(読売)「見えぬ活路」(朝日)と完全に暗礁に乗り上げた感じが濃厚だ。読売によれば、外相・岡田克也が示した徳之島へのヘリ部隊移転を軸とする資料に対する米側の反応は、「素人同然の内容」ということだ。専門知識を持つ外務、防衛両省が深く関与していない事に起因しているという。いかに鳩山の腹案がずさんな思いつき程度のものかが分かる。地元と米国から拒絶反応を突きつけられて、普天間5月決着はほとんど不可能とみられる。鳩山は支持率急落について「国民のために、一生懸命やっている姿というものを、まだ必ずしも見せ切れていない。それを見せ切るために、努力をする」と述べているが、陳腐な言い訳に対する国民の反応は、もはや“生理的嫌悪感”の段階に入っている。一生懸命やって褒められるのは、幼稚園の運動会だけだ。鳩山は「改革の方向は絶対間違っていない」と強調するが、改革とは「政治とカネ」に関するあらゆる国会喚問要求を拒絶するという前代未聞の対応のことだろうか。「普天間5月決着」ができないままなお退陣がなければ、野垂れ死に路線をひた走る流れとなってきた
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