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2010-03-04 07:39

小沢の2人区2人擁立戦術は共倒れ必至

杉浦 正章  政治評論家
 民主党幹事長・小沢一郎が「最終戦」と位置づける参院選挙で、小沢選挙神話の崩壊が予見される。2人区に2人擁立する作戦が「政治とカネ」の逆風下、まず奏功しないと判断されるからだ。共倒れの危機が党内や支持労組の間で高まっており、閣僚からも批判発言が出始めた。小沢は87人の第1次公認に次いで2週間以内に残る2人区5カ所を含めた第2次公認を発表する予定だが、総選挙直後の勢いで決めた複数擁立方針が、いまだに通用すると思い込んでいるようだ。強気一辺倒の小沢の自転車操業路線がここに来て大きな壁に突き当たっている。

 2人擁立構想は昨年9月に小沢が打ち出したものだが、筆者は10月1日の本欄への投稿で「衆院選挙の勢いを前提にした選挙戦術が成り立つ可能性は、少ないと見るべきだろう」と予言した。半年先を読んだことになるが、事態はその通りになってきた。当時は「小沢天才は考えることが違う」と礼賛ムードだった党内から批判の声が上がり始めたのだ。閣僚では今回改選期となる防衛相・北沢俊美が「支持率が低下するはるか前の戦略だ。前回参院選のように、1人区に全力投球するべきだ」と反対ののろしを上げた。また読売新聞によると、国土交通相・前原誠司のグループに所属する外務副大臣・福山哲郎が出馬予定の京都選挙区では、共産党の地盤も強く、京都府連内には2人目を模索する執行部の動きを、共倒れを狙った「福山つぶし」ではないかという疑心暗鬼が生じているという。前原も出席した3月1日夜の「七奉行」会合では「参院選は厳しい」との認識で一致したが、当然複数擁立問題が話し合われたに違いない。場合によっては複数擁立問題が党内抗争の火種となる可能性も出てきた。

 批判は党内ばかりではない。支持母体である連合幹部からも、北教組の幹部逮捕事件を契機に、「2人区で2人当選などは不可能」との声が漏れはじめた。まさに小沢はKY(空気読めない)状況に1人置かれつつあることになる。がらりと環境が変わったのに、自らの“神話”だけを頼りに、党内や支持母体がついてくると信じて疑わないのだ。環境の変化はどこから来ているかと言えば、言うまでもなく支持率の低下である。長崎知事選、町田市長選の惨敗がいみじくも物語るところは、「政治とカネ」で民主党フィーバーは去ったということだろう。加えて選挙基盤の労組が動けない。北教組問題の全国的波及もささやかれる中で、日教組はもちろんのこと、連合も表だった動きができない状況となってきた。日教組のドンで参院議員会長・輿石東も選挙母体である山梨県教組幹部が、政治資収支報告違反で罰金刑を言い渡された“癒着”を、野党から蒸し返され、参院予算委での格好の標的になってきている。

 世論調査も、とても2人擁立の余裕などないことを物語りはじめた。朝日の投票先の政党調査では民主党と自民党の差が狭まってきている。「いま投票するなら」が前回の民主36%、自民23%から、民主34%,自民27%へと、じわり差を狭めた。とりわけ無党派層では、民主に投票の回答が16%にとどまり、自民が22%と逆転している。これは民主党離れをした浮動票が、一部自民党に向かう兆候を見せていることを物語っており、大きな潮流の変化だ。それにもかかわらず小沢が“はるか以前の戦略”に固執する背景には、何があるのだろうか。ひょっとしたら「小沢辞任カード」で、選挙後に影響力を維持しようと考えているのではないか、という思いがよぎりはじめた。昨年5月の辞任カードで支持率が一挙に回復した。2匹目のドジョウねらいである。しかし、有権者が「反自民」に凝り固まっていた昨年と異なり、辞任カードが今回も大きく党勢回復に役立つかというと、疑問も残る。小沢が辞めても鳩山が居座る状況では、大きな変化は望めまい。小沢は相変わらず女性候補やタレント系候補発掘に専念しているが、有権者が熱狂するかというと、全くさめている。「マニフェスト=裏切り」の認識が定着して、参院選向けに新マニフェストを作っても、信用されないのと同様だ。
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