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2009-12-26 10:10

(連載)普天間基地問題と外交(2)

湯下 博之  杏林大学客員教授
 第四に、政権交代と外交の一貫性についてである。政権が交代すれば政策の変更はあるし、政権が交代しなくても、事情の変化等により政策の変更が必要になることはあるが、政策の変更に際して、関係者に十分説明して、支持を得ることが大切である。特に外交においては、政権というよりは国が基礎をなし、国と国との関係でものごとが処理されるので、政権の交代如何にかかわらず、外交が一貫性を保つことが重要である。そして、外国が重視する事柄についての政策を一方的に変更するような場合には、それなりのリスクを負うことを認識する必要がある。ましてや既に成された合意を破棄するようなことは、信義違反であり、極めて大きな反応を招くことを承知している必要がある。

 第五に、そもそも基地や安全保障の問題について、日本ではこれ迄十分掘り下げた議論がなされてこなかったため、何故基地が必要なのかについて、はっきりした理解がない。第二次世界大戦後の日本の再出発に際し、日本の安全保障のあり方について、非武装中止論、自主防衛論、自衛隊と日米安保体制の組み合わせ論の三つの考え方があったが、前二者は現実的でなく、自衛隊と日米安保体制の組み合わせの道が選ばれた。その後、冷戦時代は、この政策が功を奏し、日本は安全保障は米国に委ねて経済に専念し、世界第二の経済大国に発展した。その反面、安全保障ぼけのような現象が生じ、冷戦後の多極化時代となって、日本としてはどうするのかを考えなければならないのに、そのような発想や議論が生まれていない。普天間基地の問題は全世界的規模の米軍再編の一環であり、冷戦後の新しい国際情勢の下で日米同盟をどのようなものにするのかという問題の一環であるのに、そのような議論抜きに単なる沖縄にある一つの基地の問題として論ぜられており、これでは満足な解決は得られない。

 第六に、上述のとおり普天間基地移設問題はローカルな問題ではなく、国の運命にかかわる問題であり、政局レベルで処理すべき問題ではない。移設についての日米合意がなされた当時政権を担っていた自民党も、今や野党であるからと言って傍観するのではなく、自分たちが行った合意が実施されるよう、地元民への働きかけ等、一肌も二肌も脱ぐべきである。

 第七に、米国は、これ迄のところ、日米関係の重要性にかんがみ、それを壊すこととならないよう、普天間移設問題について、大人の態度をとっているように思う。ありがたいことである。だが、それにつけ込んで傷を大きくしてはならないと思う。普天間移設問題は日米合意どおりに早期に実施することとし、自民党もそのために協力し、別途、基地問題を含む安全保障問題を、新しい国際情勢の下での日本の進路や日米同盟のあり方の問題と合わせて、真剣に検討し、米国とも議論することが必要である。(おわり)
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