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2009-10-13 20:36

(連載)アフガン問題と周辺諸国(1)

茂田 宏  元在イスラエル大使
 アフガン戦争に今後どう対処するかが米国内で大きな論争になっている。オバマ大統領は近いうちに増派するか否かを決定をする予定である。右に関連し、米国内で、軍事戦略のほかに、外交戦略としてアフガン安定化への周辺諸国の協力を求めるべきであるとの議論が出てきている。具体的には、クリントン国務長官がアフガン周辺諸国の首脳会議を示唆し、キッシンジャー元国務長官がその構想を支持している。周辺諸国の事情を大まかに見ると、次のとおりである。

 第1に、パキスタンはアフガンが安定し、パキスタンに友好的であることを望んでいる。パキスタン内には、タリバンが支配するアフガニスタンの復活が不可避であれば、それとの関係を良好なものにするとの観点から、タリバンともそれなりの関係を保持しておくべしとの意見と、タリバンはパキスタン国内でのタリバンをはじめ、もっとも重大な脅威であり、これを敗北させることが重要だと言う意見がある。現在、パキスタンでは後者の意見が強く、軍はワジリスタンでタリバンを攻撃する準備をしている。米がアフガンから撤退しないとの判断が強くなると、後者の意見が更に強くなるだろう。パキスタンとは協力できる。

 第2に、イランは、タリバンが支配するアフガニスタンを避けたいと考えている。イランとタリバン支配下のアフガニスタンの関係は悪かった。イランには多くのアフガン難民がまだ滞留しており、イランはアフガンが安定化し、これら難民を帰したいと考えている。さらにタリバンの主張するスン二派のイスラム原理主義が、イランのシーア派のイスラム原理主義と相容れない。イランは中立化したアフガンを望んでいる。米の支配下のアフガンを望んでいないが、タリバン支配下のアフガンも望んでいない。2001年のタリバン政権の転覆に、イランは協力的であった。北部同盟はタジク人主体で、タジク人はペルシャ語を話す民族である。タリバンはパシュトゥン人であり、イランはタジク人に親近感をもっている。反タリバンと言う点では米国と協力する余地がある。

 第3に、ロシアは、イスラム過激派の勢力伸張を望んでいない。タリバンがアフガニスタンで復権することは、旧ソ連中央アジア諸国でのイスラム過激派の勢力伸張につながり、間接的にロシアの安全保障に影響を与えるほか、直接的にもチェチェンやその他のイスラム系自治共和国への影響がある。アフガンにソ連が侵攻した背景には、アフガン情勢の推移がソ連に与える影響への懸念もあった。この状況は変わっていない。(つづく)

 
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