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2009-09-16 12:30

(連載)鳩山民主党の自主外交に期待する(1)

若林 秀樹  元参議院議員(民主党)
 民主党の外交理念は、1996年の結党以来、色々言葉は変わっても、底流にあるのは「自主外交の確立」である。今回の総選挙でのマニフェストでは、その一番の特徴が「緊密で対等な日米関係を築く」に現われており、その関連の政策として「日米地位協定」及び「在日米軍のあり方」の見直しが提起された。

 鳩山由紀夫氏の政治の原点は、祖父である鳩山一郎氏に見ることができる。一郎氏は、由紀夫氏の政治哲学に大きな影響を与えた「友愛革命」を提唱し、外政では「自主外交」を目指した。歴史は繰り返すのか、興味深い事実は60年程前に遡ることができる。戦後まもなく日本自由党を結成した鳩山一郎氏は、総選挙で第一党を勝ち得ながら、「公職追放」で総理になれなかった。しかしその後政界に復帰し、1954年11月、日本民主党を結成した。そして当時、麻生太郎氏の祖父であり、「対米協調外交」を歩んでいた自由党の吉田茂総理を退陣に追い込み、総理の座を手に入れた。

 まさに今回の総選挙同様に、鳩山ブームを巻き起こしたのである。その鳩山一郎首相は、米国中心の外交から転換し、1956年、懸案であった日ソ国交回復を実現し、その直後に日本の国連加盟を果たした。「自主外交」の必要性は、今に始まったことではない。大正から昭和初期に活躍し、『暗黒日記』で知られる清沢洌(きよさわ・あつし)は、「自主外交」を主張すること自体が日本人のインフェリオリティー・コンプレックスであるという。

 清沢氏は「他者の利益だけを目指した外交などあったはずがない。外国と行動を共にしたとしても、それが自己の利益にかなうからであった。肩肘をはって自主外交と言うこと自体が、劣等感の現われ以外の何物でもない。日本は大人の真似をしようとする子どもに似ていると言う者がある。これに怒るようでは、この説を証明するようなものだ。いつかこれを笑って済ませるようになりたいものだ」(北岡伸一著『清沢洌』)と、言葉だけの自主外交のあやうさを喝破した。今の時代が清沢氏の言う「笑って済ませる時代」に入ったのかどうかという点については、残念ながら疑問であると言わざるを得ない。(つづく)
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